第4話:あの日の面影
トラさんなんだよ。
薬草を採取してて襲われたんだよ。
「薬草の採取でコイツが!?薬草の採取だと西門の近くの森だよな?」
東門の森なんだよ。
「あっちは凶悪な魔獣が居るから危険なんだが・・・とはいえここまでのはめったに出てこないはず・・・」
魔物の気配がまるでなかったのに、こいつが突然現れたんだよ。
「こいつはランクBのキラータイガーだろ?しかも毛皮に傷が全くない・・・どうやって倒したんだ?」
うーん、あんまり自慢できる倒し方じゃないんだよ・・・
簡単に言うとおっきい石でごちんってやったんだよ。
「なるほど、わからん。それにこいつが入るほどの収納スキルとか普通有り得ん」
夢中だったからね。私ももう一回やれって言われても出来ないと思うんだよ。
「で、こいつの解体と買取か・・・毛皮以外にも使えるものはたくさんあるからな。時間がかかるぞ?」
どれくらい?
「半日、いや丸1日かかるかもな・・・何しろこんなものを扱うのは初めてだ・・・」
そうなの?
「キラータイガー自体はそれほど珍しいものでもない。だけどな、普通は倒す過程でボロボロなんだよ。身体がバラバラだったり毛皮が丸焦げだったり・・・」
ああ、そういうことね。
「だから、解体と言っても肝を取り出すだけとかそんな感じだ。丸ごとなんて初めて見たぜ・・・」
じゃあ、どうしようかな?どこで待ってよう・・・薬草でも採りに行くかな?
でも、まだニニアさんにお金を返してないんだよ・・・
このままどこかに行っちゃったら泥棒だよね?ここで待ってるしかないと思うんだよ・・・
「宿で待ってていいんだぞ?」
ずっと解体作業を見てたらおっちゃんに話しかけられた。
お金がないんだよ。それが終わらないと宿に泊まるお金がないし、ギルドの登録料も払えないんだよ。
それに、街に入るときのお金をニニアさんに返さないといけないんだよ。
「そうだ、薬草の査定がそろそろ終わるんじゃない?」
ごめんねニニアさん、ずっと待たせちゃって。
「薬草の査定?終わってるわよ?」
トラさんは明日にならないと終わらないみたいなんだよ。
「じゃあ、先に薬草の分だけ。薬草は10束で銀貨1枚。申告通り283束あったから銀貨28枚とあまり3束ね」
銀貨1枚は銅貨に両替して欲しいんだよ。
「ギルドの登録料の銀貨3枚を差し引いて、銀貨24枚と銅貨10枚ね」
あれ?銅貨10枚で銀貨1枚なんだね?
ニニアさんありがとう!
銅貨5枚をニニアさんに渡す。
「別に返さなくてもよかったのに・・・」
こういうことはきちんとしないとダメなんだよ!
さてと、ニニアさんに借金も返したし、ギルドの登録料も払ったし、これで借金奴隷になる心配はなくなったんだよ。
すると、次は住む場所なんだよ。どこかお手頃な宿屋を紹介してもらおう。
「安い宿屋?」
狭くてもいいんだよ。とりあえず、ベッドさえあれば。
あとはお安い感じの食堂も教えてほしいんだよ。堅パンとか塩スープの。
「そんな質素なものでいいの?」
生活する分にはそれくらいで十分なんだよ。
「そうね・・・『肉と安らぎ亭』かしら・・・」
え?
こんな昔からあるの!?
場所は一緒なのかな?ちょっと行ってみるんだよ!
『肉と安らぎ亭』
本当にあったんだよ・・・
私の知ってるのと同じ場所に。
建物自体は記憶にあるのとは違うけど、同じ店なんだよ。
もちろんマーシャさんは居ないわけだけど、落ち着く感じの宿屋だね。
「一泊銀貨1枚だよ」
いまいち金銭感覚が追い付いてないんだよ・・・
前は1泊で銀貨3枚だったけど、そもそも銀貨1枚は銅貨10枚なんでしょ?
まだ慣れないんだよ・・・
「ちなみに食事は別だ」
とりあえずは10日ほどお願いなんだよ。
「銀貨10枚な」
ちゃりんちゃりんちゃりん・・・
「ほら、207号室だ」
同じ部屋なんだよ・・・前の世界で初めて泊まった時と同じ部屋なんだよ・・・
鍵を受け取って、荷物を置いたつもりになって・・・
1階の食堂に降りてきたんだよ!
「なんだ、嬢ちゃん飯はまだだぞ?」
ちょっと街の探検に行ってくるんだよ!
思い付く場所を色々と確認しよう。
街並みはだいぶ違うんだよね。大通りの位置は同じだけど、路地とか建物はほとんど違う。
そもそも東門が普通の門になってるしね。
ディジィばあちゃんはまだ生まれていないけど、アトリエはあるのかな?
なんとなくだけど、ある気がする。アトリエの主人は別の人だと思うけど・・・
ここの角を曲がれば・・・
・・・やっぱりあったんだよ。
『アトリエ・アマリリス』
同じ場所だけど建物は違うね。
外から見た感じお薬というよりも魔道具系の錬金術なのかな?
使い方もわからないような設備がたくさんあるんだよ。
でも、お薬の道具もあるね。
私の知ってる作り方とは違うのかな?
でも、薬草の採取依頼はあったよね?
そうだカインズさんのお店はどうなってるのかな?
もちろん私の知ってるカインズさんは居ないわけだけど、ご先祖様のお店とかあるかも!
・・・無かったんだよ。同じ場所には大きな商会じゃなくて小さな商店が何件かあったんだよ・・・
うーん、ちょっと残念だけど、そういうこともあるよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます