第34話
戻るべきか、進むべきか。
クレイは答えを出せないまま夜を迎えた。
ギアゴーレムは明らかに強く、クレイ達だけで手に負えるとは思えない。
しかしギルド本部に応援を頼めばテストクエストの失敗となり、エンブレムは誰からも相手にされなくなるのは明白だった。
(どうする……? どうすればいいんだ……?)
クレイ達はカーテンを閉めた家の中にいた。
持ってきた食料で夕飯を終えてもまだクレイは答えを出せずにいる。
こちらの戦力は紋章を使って強化ができるクレイとほとんど戦闘経験のないアリア、そして実践豊富なマリイだけだ。
実質マリイしか計算に入れられず、どう考えても勝ち目はなかった。
いつもクエストに帯同せず、出発前にサポートして終わりなクレイにとってこれが初陣であり、出鼻をくじかれた。
元々難しいと分かっていたこのクエストだが、ギアゴーレムを見てから完全にクレイのやる気は削がれていた。
なんとかなると思っていたクレイだったが、現実を知った今はただ恐怖を感じるだけだ。
遠くで聞こえる地響きの音がするたびに震えることしかできなかった。
クレイを見てアリアとマリイは顔を見合わせる。
「大丈夫ですか?」
「あんまり深く考えない方がいいんじゃない?」
クレイは青ざめた顔を上げた。
「大丈夫かって……。あ、あんなのと戦うんだよ? 二人はそれができるの?」
マリイは腕を組んで悩む。
「う~ん。確かにあれは強そうだけど、あれ以上の敵と戦ったこともあるからねえ。もちろん一人でじゃないけど」
マリイはクレイの手を取った。
「わたしはクレイ様が戦えと言うならどうなっても戦うつもりです」
二人はクレイよりよっぽど勇気があった。
そのことがクレイの自信を更に喪失させる。
「……そっか。そうだよね……。マリイはブラッドファングで活躍してたし、アリアはビッグマウスを倒しちゃうんだ……。二人とも僕なんかよりよっぽど強いんだから、怖くないはずだよ……」
益々落ち込むクレイにアリアとマリイは困っていた。
クレイは下を向いたまま立ち上がり、弱々しく歩き出した。
「……どうするかは明日決める。それまでは二人とも休んでおいて……」
クレイはか細い声でそう言うとリビングから出て行った。
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