冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!
東導 号
第1話「プロローグ 二度追放された最底辺ぼっちの俺」
「じゃあな、エル。ウチの現状からわずかな金しか渡せないが、まあ頑張ってくれや。お前は身体が丈夫だし、剣も格闘もそこそこいける。ちょっち武者修行すれば、すぐに仕官先は見つかるよ。知らんけど」
畜生!
知らんけど、だと!
クソ兄貴の野郎が!
俺は血を分けたあんたの身内なのに!
他人事だと思いやがって!
「エルヴェ・アルノー! あんたバカあ? 騎士爵家の息子だから、もう少し使えると思ったけどさ、とんだ見込み違いだわ! 今日でクビ! 代わりの新人を入れるから! どこにでも行きなさい! あんたはね、『最底辺』『能無し』『無駄飯食い』『役立たず』『ゴミ』よ。騎士になるなんて到底無理だし、どこのクランも拾わないし、さっさと冒険者もやめたらあ?」
この冷血女め!
薄給で散々こき使った上に!
とんでもない早口で、悪口、罵詈雑言並べやがって!
……過去のいまわしい記憶が、次々と俺の心にリフレインする。
そんな
「まもなく開始いたしまあす!!!」
司会進行役たる冒険者ギルド職員の声が魔導マイクを通して響き渡る。
……ここは、冒険者ギルド総本部内にある大闘技場。
3万人入る観客席は、「がやがやがやがや」と騒がしい話し声でいっぱい、超が付く満員の大盛況だ。
その3万人の観客の中に革鎧姿の俺も居た。
大勢の観客席の中で仲間や友人もおらず、たったひとりぼっちの俺は、
ランクFの新人冒険者エルヴェ・アルノー、16歳。
スフェール王国貧乏騎士爵アルノー家の3男坊で、武者修行という名目で家を出された身だ。
ウチの実家アルノー家はめちゃくちゃ貧乏だから、末っ子の俺を郎党として雇う余裕がない。
「身内だから雇い賃が安いんじゃね?」と思われがちだが、
もしも俺がアルノー家の郎党になると王国の法律により、
「貴族子弟を雇う」という形になり、雇い賃は結構な金額となる。
だから赤の他人で平民の戦士を雇う方が格安で済むのである。
という事で、家督を相続する一番上のクソ兄貴から、食い扶持減らしの厄介払いと言うか、
実家に悪評が立たないよう、一応名目上は武者修行だが、 実際には『追放』に近い旅立ちを強いられたのだ。
こうして『追放』されたが、クソ兄貴から持たされた手持ちの金はほんのわずかで、安い宿屋に1週間泊まったら無くなり、あっという間に路頭に迷う。
それゆえ、すぐに稼ぐ
最初の依頼受諾は薬草採集。次にスライム討伐。
支給された報奨金はひどく安かった。
だが、これで飢え死にだけは免れた。
その後……
騎士爵家出身で、身元がしっかり、多少分別がある。
かつ、身体が頑丈で、そこそこ力があるのを買われ、
冒険者ギルドランキング上位クラン、
『シーニュ』に誘われる形で仮所属となり、研修を兼ねて『荷物持ち』をしていた。
荷物持ちと言っても、単に荷物を運ぶだけではない。
俺の命など知った事じゃない感が満々。
身代わりというか、とかげの尻尾切りみたいな捨て駒まがいの盾役、
毒、麻痺、爆発、呪い等々、ヤバイ宝箱の罠の実験台にもされた。
でも……俺は逆らわなかった。
はい! はい! と元気よく返事をして、与えられた仕事に臨んだ。
クランから指示された事は無理と思われる事も全て一生懸命やり、
何とかこなしたつもりだ。
それどころか、進んで料理、洗濯、掃除などの家事は勿論、もろもろの雑用もやった。
更に更に!
俺はガキの頃から、勘だけは鋭いから、出現する魔物の気配も事前に察知し、逐一報告もした。
未熟ながら、少しでもクランの役に立とうと思ったから。
しかし!
結局それが、致命的となった。
俺の報告が、『シーニュ』の偵察、索敵を担当するシーフには、
ひどく気に喰わなかったようなのだ。
「エルヴェは新人の癖に出過ぎた真似をする」と陰口を叩かれ、
他のメンバーのミスも全てが俺のせいにされ、ある事ない事をでっちあげられ、
奴は誹謗中傷したらしい。
根も葉もない、身に覚えのない事を非難され、抗議したが……
「お前は新人の癖に生意気だ」と一蹴。
全然聞き入れて貰えなかった。
結果、散々安い賃金でこきつかわれた挙句、
おととい、『シーニュ』のクランリーダーの銀髪女魔法使い、
ミランダ・ベルグニウーより、
容赦ない罵倒、罵声と共に一方的にリリースされ、『無所属』になったばかりだ。
ちっくしょ~!
あいつら、今に見てろ!
実力をつけ、見返してやる!
絶対にざまあして、俺を放り出したクソ兄貴を、
そしてゴミのようにリリースした冷血女ミランダを、
中傷し、陥れた『シーニュ』の屑メンバーどもを、心の底から後悔させてやる!
……そう思った。
ちなみに冷血女ミランダは、ランクBのランカー水属性魔法使い。
もし逆らったら、容赦なくカチンカチンに凍らされる。
他のメンバー達も、ランクBのランカー。
雇われの身なのは勿論、多勢に無勢。
現在ランクFのぼっち俺が、敵うはずもない。
ぐっと怒りを抑え、耐えるしかなかったのだ。
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