**3 見えない翼でペンキ塗りの空に…
わたし背中に見えない翼つけてる JIMMYを求めて生えた翼をーー
だからこんなに惨めに吊られないでも高みまで行きつける
だけどあなたたちそれ知らないもんだから、こうしてわたしをペンキ塗りの空へ磔にするんだわ
あなたたちがセットした絵空事の現実にべったり手形つけたわたしを、はみ出し者あつかいに糾弾しつづける
翼があるのにどうしてもお空にさわれないのと、ようやく真実語ったのに
セリフ以外はしゃべるな、演技以外はするなと、あなたたちは責めやまない
けど、この世の万象に空ははじまる はじまってる
わたしの腰の横、もう、空
足下からも、もちろん
地面から何キロ昇ったら空ですか?
わたしそんなふうには考えない
真剣に考えてるのは、足先が空をかきまわしてるのになぜだか、わたしの脳塊はちっとも空を知覚できずにいる不可解…
わたしの脳塊、生まれてこのかたほんとは何一つじかにさわったことないからなの?
JIMMYの吐息にもわたしの脳塊は、いちどだって直にはぬくもったことないのよね
じゃ、わたしの瞳の角膜は水晶体は硝子躰はJIMMYの赤光を宿したことあった?
ただに通過させただけ?
0.39ミクロン 0.66ミクロン 速攻通過中って?
わたし、空さわったことないもん 断じて!
だから、JIMMYが必要よ
いつだって 今すぐに
頭蓋の中で知覚してるというわたしの脳塊は、新鮮な血中酸素をまっさきにむさぼってるはずだのに
よどんだ沼の底に腐乱しだしているみたいで
JIMMYがやって来、そんなわたしの脳塊をそうっと泥土からすくいあげる
そうして陽だまりの
さあ、つつまれてごらん
これが十五歳の君を生かしめてる現実だよ ただ、なぶられてごらん かわききるまで
ーーそう、ささやくように諭さしてくれるのだとしたら
…あ なんだかほわあと、くすったい
わたし、その時、はじめて、ほんとの、外界との知覚というものを感じるんだろか……
停滞することのないあたかな知覚
すなわち、それは微風?
そよ風と同化しだしていい?
幾億幾兆ものわたしに微塵となるから?
この今だけのわたし 一瞬の前でも後でもないわたしになって?
それが、さわるということ?
末端からの刺激を選別、認識するもどかしさなどどこにもなくて、時を超越してるこのうえない快感に?
ああ 脳塊なんて 霧散しちまえ!
わたしなんてどこにもいなくなれ
もう、翼もいらない
大気になっちまってもいい
JIMMYをとりまく虚空そのものに……
ーーそんなを想ってただけのはずが実際のわたしはというと、
こうしてペンキで塗られた空の書割に磔られたまま
堕天使の役柄には不適な器量、演技不足だと、
観客のやまないブーイングに震えていただけなんでしたーー
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