第11話 ゴブリンに必要なのはLevelと連携
――一ヶ月後――
「総大将様! 第七〇ゴブリン部隊、魔物の駆逐完了しました!」
「よし、レベルはどのくらい上がった?」
「全体でおよそ一〇前後です!!」
「よくやった! これでモテ男に一歩近づいたな」
「はい! ありがとうございます!」
そう言って笑顔で頭を下げて自身の隊に戻っていくゴブリン。
その姿を見ていたシャナが感心したように言う。
「……凄いですね〜優斗様。まさかあのゴブリン達が此処まで強くなるとは思っていませんでした〜」
「いやいや、ゴブリンも人間で言う天才と同等のステータスを持っているんだから強くなるのは当たり前だろ? それにゴブリンは色々なことが出来る多彩な魔族だから尚いい」
「それには私もびっくりしました〜」
そう――ゴブリン達の一番の強みは人間と同じように才能が人それぞれ違うことだ。
これは魔族の中で唯一無二の個性と言ってもいい。
殆どの魔族は大体の戦闘スタイルが決まっている。
例えばオークは魔法が使えず前衛しか出来ない。
そして吸血鬼は魔法も肉弾戦も出来るが、聖属性に含まれる回復魔法などは使えない。
しかしゴブリンだけは、ステータスが他の魔族よりも弱いが、ほぼ全ての才能を網羅していると言っても過言ではなく、戦争において一番気をつけないといけない魔族の一つである。
しかし味方となれば、その多種多様な才能は物凄く頼りになる物だ。
なので俺はまず一人ずつ鑑定し、一つの才能毎に隊を編成した。
これは才能が違うと強くなる過程も全く違ってくるため、最短で強くするにはこれが一番効率が良かったのだ。
才能で分けた後、まずはLevel上げだ。
鑑定で分かったのだが、ゴブリンは高くても五〇程しかなく、ジェネラルは一〇〇、キングは二〇〇と全体的にめちゃくちゃ低い。
俺の目標は最低でもLevelを一三〇までは上げたいと考えている。
そしてキングには頑張って四〇〇を超える戦士を出して欲しい。
そいつらには後に大将として指揮を担当できる様にさせる。
現時点で一隊基本一〇名として、兵士隊が一五〇、魔法士隊が一二五、狼騎兵隊が九〇、暗殺隊が五〇、治癒師隊が八五、弓兵隊が一〇〇となっている。
戦争でも同じ隊で戦って貰う予定だ。
そしてLevel上げだが、才能が同じ魔物を倒す事にによってより簡単にLevelを上げることが出来る。
これは俺が昔王国で習った事なのだが、戦士系の魔物を戦士と魔法使いが倒すと、戦士の方がLevelが上がりやすいらしい。
何故なのかは知らないが、実際に俺も試してみてそうだったのでコイツらにもやらせようと言うわけだ。
まず兵士隊と狼騎兵隊、弓兵隊には肉弾戦に強く、防御力の高い魔物を倒してもらった。
弓兵隊も同じ魔物を相手にする理由としては、戦争で戦うのが主に戦士系と言うのもある。
そして魔法士には魔法系の魔物を、暗殺隊には隠密に特化した魔物を、治癒師隊にはアンデッドを相手にLevel上げをしてもらった。
そして一ヶ月が経ち……ゴブリン達の平均ステータスは大幅に上昇した。
数値化するとこんな感じだ。
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ゴブリン
ステータス
Level:100
総合値:22350(AAA級)
体力:5500
魔力:4750
筋力:4000
防御力:3900
敏捷性:4200
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ゴブリンジェネラル
ステータス
Level:160
総合値:51730(S級)
体力:12000
魔力:9700
筋力:10040
防御力:9980
敏捷性:10010
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ゴブリンキング
ステータス
Level:250
総合値:98800(S級)
体力:22050
魔力:15800
筋力:20600
防御力:22350
敏捷性:18000
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こう見てみると初めよりも大分マシになっている。
まぁまだ一ヶ月しか経っていないので、この成長スピードは異常と言えるだろう。
「よし、取り敢えずLevel上げは切り上げるとして……次は連携だな」
そう、これでやっとまだ土俵に立てたと言う程度でしかない。
これからはお互いがお互いの戦闘を邪魔せず力を一〇〇%発揮できる様にする為の訓練を始める予定だ。
取り敢えず軍半分半分に分け、一度何も教えずにやらせてみる。
多分そこで戦いにくいと言う事が分かるだろう。
そこから初めてどう戦っていけばいいかを教えていく。
よってまだまだ道のりは長い。
しかしこのゴブリン達が終わったらまた新たな所に行かないといけないので、本当に切羽詰まっている。
「あークソほど時間が欲しい……」
そんな愚痴を溢しながらゴブリン達の下へと向かった。
***
「……優斗様のご様子はどう?」
「毎日朝から晩までゴブリン小隊の所へ通っています。どうやら彼らを徹底的に鍛えている様でして……どうします? 一ヶ月前の城の修繕費を払わせますか? 私は無駄にお金が掛かった罪として払わせたいのですが」
魔王であるアリシアの問いかけに愚痴とも取れる言葉で返す魔王軍幹部の一人——フリー。
彼女はアリシアのお世話がかりで親友であり、アリシアが最も信用している人物と言ってもいい。
その為彼女の前では自然体を取っているし、フリーもアリシアの前では敬語ではあるが口が悪くなったりと何かと気を抜いている。
「いえ、優斗様にはそこまでして貰う必要はないわ。大方ゴブリン達の方から喧嘩を売ったのだろうし」
「ゴブリンは軍でも喧嘩っ早いと有名ですしね。…………それと先程から気になっていたのですが……如何して優斗様呼びなのですか?」
「え? い、いえ何でも……」
「怪しいですね……」
フリーがジッとアリシアを見つめる。
するとアリシアはスッと目を逸らし、右往左往とグルグル目を回していた。
「……教えて下さいアリシア。如何して優斗様呼びなのですか?」
「…………た、ただ私よりも強いお方たから尊敬の意を込めてそう呼んでいるだけよっ!」
勤めて冷静を取り繕うアリシアに疑惑の目を向けるフリーだったが、これ以上何を言っても話してくれそうになかったので諦めて話題を変えた。
「ゴブリンが強者に逆らうことなんてあるんですかね?」
「……優斗様が隠していたんじゃない?」
「でも軍にいるものなら分かる気がするのですが……」
「……ゴブリンは確か、ルドルフの管轄よね?」
「はい。ですがあの馬鹿は軍を放っておいて常に聖林に閉じこもっております。その為優斗様とシャナから苦情が来ています」
「……優斗様も?」
「そうです。何でもゴブリン達があまりにも弱すぎと言う事です」
「……ルドルフには後で何か罰則を下すわ」
「それが宜しいかと。いい加減ルドルフには働いて貰わないとこちらに皺寄せが来るだけです」
「はぁ……あの人を幹部にしたのは間違いだったかしら?」
この時優斗が言った様に、ルドルフが後に海に沈められそうになるのはもう少し先の事である。
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次話は勇者側のお話です。
お試し投稿なので、5万字程書いた時点で、人気であれば続けます。
なので、☆☆☆とフォローをよろしくお願いします。
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