第44話 疫病【サイド回】
私の名はガデンツ・ギルフォソンヌ。
この国で一番大きな宗教である【イルマンヌ教】の教皇だ。
今まで王様はこのイルマンヌ教を国教に据え、数々の有益なものをもたらしてくれていた。
しかし、どういうことか。
王様が崩御なされて、新しい若い王になり、国教を変えるなどという愚行に出られたのだ。
なんと、巷ではエルド教などという得体の知れない宗教が、勢いを増してきている。
「ぐぬぬ……なんという……」
私にはこの状況が気に食わなかった。
このままでは、イルマンヌ教の築き上げてきた利権などが剥奪されてしまう。
そこで私は考えた。
禁断の呪術を使い、疫病を流行らせようと思いついたのだった。
「くっくっく……これでエルド教などという馬鹿はおしまいだ……」
疫病を流行らせ、そのすべてを、エルド教のせいにしてしまうのだ。
私は、エルド教の教会の周りの水路に、この疫病の種をまき散らした。
そして、エルド教に近づくと疫病が蔓延するというチラシを作り、あちこちに貼るように指示した。
これで、馬鹿な大衆はエルド教のせいだと思うだろう。
エルド教の評判が落ちれば、自然と王も愛想をつかすだろう。
◆
【sideエルド】
「なんだこのバカげたチラシは……」
俺は屋敷の壁に貼られていたチラシをはがし、ため息をつく。
そこには、エルド教に関わるとろくなことがないなどという内容が書かれていた。
まったく、無根拠にもほどがある。
いやまてよ……だが、これを信じるやつがいないとも限らない。
そこには疫病の原因がエルド教などというバカげた内容が書かれていた。
もちろん、そんなのはデタラメだ。
だが、最近実際に疫病が流行りつつあるという。
このままでは、本当にエルド教のせいにされてもおかしくないのでは?
もしエルド教のせいにされたら、王様の耳にもそれは届くだろう。
そのせいで、エルド教の評判が落ち、俺がアルトに断罪されるようなことがあれば……。
うん、あり得ない話ではないな。
そんな未来はごめんだ。
なんとしても、この疫病を解決させなければ……。
俺はエルド教の評判を少しでもよくするため、無料で診断を行うことにした。
俺は医者ではないんだけどな……まったく。
だが日に数時間だけ、疫病にかかった人を回復魔法で治す時間を設けた。
エルド教の教会で、毎日疫病の人を治療する。
こうすることで、エルド教と疫病に関するネガティブな噂をとっぱらうという作戦だ。
おかげで、むしろエルド教に改宗すると、疫病を治してもらえるといういい噂が広まった。
よしよし……。
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