第4話 背中の傷
”死ぬかもしれない”
そう言われて僕は大人しく間宮さんの家に行くことを選択した。
車の中で話していたことを総合すると、間宮さんはいわゆる”霊感のある人”らしい。
霊以外も視えるらしいのだが説明すると長くなるから、と笑顔で言われたが深く聞く余裕なんて僕にはなかった。
「別に信用しなくてもいいけれどね」
ソイツは相変わらずぶら下がっていて、窓を叩いたり首を傾げながらギュル…ギュル…と音をたてている。
どうやらソイツは車の中には入れないらしく怒っているのか、窓を叩くたびに大きな車体が少し揺れる。
「着いたよ、悪いんだけどこっちのドアから出てもらっていいかな?」
身をよじりながら運転席からでると、問答無用で腕を組まれてマンションに連れていかれる。
(間宮さん・・・胸が・・・あたってます・・・)
さっきまで絶望していたけれど、男とは単純なものでちょっとした出来事で一喜一憂してしまう生き物だ。
「家までだから、我慢してね」
(着痩せしてるけど、これは・・・Fカップくらいかな)
そんな不埒なことを考えながら間宮さんのマンションに到着した。
間宮さんのリビングは広く解放的で緑が多く、色んな本やアロマの道具やアクセサリーがキレイに並べられていて、僕は少し意外な感じがしてしばらくの間部屋の中をジロジロと見てしまった。
職場でみる間宮さんは飾り気がなく、いつも濃い色のパンツスーツで仕事をテキパキとこなしている印象で、思っていたよりずっと女性らしい空間に健全な25歳男子がドキドキしないはずがない。
「ねぇ、服脱ごっか?」
「えっ?」
「そういえば腕を怪我してるんだったね、脱がしてあげるね」
「えっ・・・」
頭が混乱して言葉が出ない僕を知ってか知らずが、間宮さんは脱衣場に僕を連れて行ってジャケットを脱がしワイシャツのボタンを外し始める。
(お楽しみタイムというやつだろうか・・・)
背中をひんやりとした感触が触れ、そしてチリっと痛みが走る。
「派手にやられちゃったね」
洗面台の鏡にちらっと背中が映った瞬間、サッーと顔の血の気がひいた。
そして背中にズキズキと痛みを感じる、僕の背中は何かに引っ掻かれたような傷があり、そこから血がじんわりと滲んでいた。
「ちょっと滲みるからね」
そう言って間宮さんは手慣れた様子で、消毒液と薬のようなものを塗ってガーゼで覆ってくれた。
「ごめんね、男性用の服ないからとりあえずこれ着て」
渡されたのは黒いネグリジェだった。
「あ、ズボンも脱いじゃっていいよ?」
「だ、大丈夫です・・・!そんなことより・・・」
「アレの正体、知りたい?」
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