第174話 霊障

小学校来の友人が最近、元気がない。

 

激痩せして、目も虚ろでいつも疲れたような顔をしている。

まるで幽霊にとり憑かれたような感じだ。

 

考えてみれば覚えがある。

あれは去年の夏休み。

遊びで心霊スポットと噂されている廃病院に行った。

 

確かに不気味だったけど、そのときは特に何かが起きたということはなかった。

その後も霊が付いてきたということもなかったし、友人もそんなことは言っていなかったはず。

 

でも、よくよく思い出してみれば、友人の両親が離婚したのもその頃だったような気がする。

もしかしたら、友人は知らず知らずのうちに呪われたのかもしれない。

両親の離婚はその呪いのせいなんじゃないだろうか。

 

俺も友人も霊感がない。

だから、とり憑かれても気づかなかっただけなんじゃないだろうか。

 

そんなことを思っている最中のときだった。

気晴らしに友人を釣りに誘っていたのだが、その友人がふらふらと歩き出して、海に落ちた。

それはまるで何かに引き寄せられるように。

 

俺は慌てて海に飛び込んで友人を引き上げた。

友人は眩暈がしただけと言っていたが、俺は霊に引き寄せられたのではないかと思う。

 

とにかく友人には濡れたままだと風邪をひくので着替えさせた。

着替えている途中も心配で、俺は友人に少し嫌がられたが着替えを手伝った。

でも、俺は手伝ってよかったと思う。

 

なぜなら、友人の体には無数の傷が付いていたのだ。

ひっかき傷や、何か鞭のようなもので叩いたような傷が付いていた。

それは背中にも付いていて、自分で付けられるような場所じゃない。

 

俺は確信した。

友人は悪霊にとり憑かれている。

この傷は霊によるものに違いない。

 

すぐに友人を連れて、地元の有名なお祓いをしてくれるところへ連れて行った。

そして、その霊媒師に友人を見てもらった。

 

だが、その霊媒師は笑って諭すようにこう言った。

 

「大丈夫です。この人には悪霊は憑いていませんよ」

 

その言葉を聞いて、俺はホッとした。

どうやら俺の考え過ぎだったらしい。

 

終わり












■解説

傷が霊の仕業ではなければ、「誰」が付けたのだろうか。

つまり、霊ではなく人間が付けたということになる。

友人の両親は離婚しており、引き取られた方の親に虐待を受けている可能性が高い。

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