第78話 近所のおばあちゃん
アパートの近くに、近所でも有名な気さくなおばあちゃんがいる。
僕は小さい頃、おばあちゃん子だったこともあり、そのおばあちゃんとは結構、仲がいい。
時々、家に遊びに行ったりもするくらいの仲だ。
だが、そのおばあちゃんは90歳を越えたこともあり、時々、体調を崩すことがある。
看病に行くと言ったこともあったが、「それは悪いよ」と断られた。
そして、体調不良が続いたのか、1週間ほどめっきりおばあちゃんの姿を見なくなった。
家に押し掛けようかと思ったが、一度、看病を断られている。
だから、僕はドアの郵便受けに、手紙を入れた。
買って来て欲しいものがあったり、何かあるなら返事がほしいって。
すると、次の日、ドアの郵便受けに手紙が挟まっていた。
それはおばあちゃんからの返事だった。
心配かけてごめん、すぐによくなると書かれている。
それからは文通のように、おばあちゃんとの手紙のやり取りが続いた。
文章は短く、世間話のようなことばかりだが、僕にとってはそれでも嬉しかった。
そんなやりとりを3ヶ月ほど続けたときだった。
突然、おばあちゃんからの返事が途切れたのだ。
僕の出す手紙に返事がない。
僕は嫌な予感がして、すぐに警察に連絡をした。
ドアを開けて中に入ると、そこには白骨化したおばあちゃんの遺体があった。
とても悔しかった。
手紙が途切れた時にすぐに連絡していれば、と。
だけど警察の人は、年が年だし、寿命だよ。君のせいじゃないと言ってくれた。
そして、その証拠にと言って、テーブルの手紙を渡してくれた。
そこにはおばあちゃんの字で、「ありがとう。楽しかったよ」と書かれていた。
僕もおばあちゃんと会えて、とても楽しかったよ。
僕は手を合わせて、おばあちゃんの冥福を祈った。
終わり。
■解説
おばあちゃんの遺体は『白骨化』していたということは、少なくとも死後3日以上は経っているはずである。
では、その期間、語り部の手紙を受け取っていたのは誰なのか?
(「僕の手紙への返事が途切れた」と言っていることから、受け取ってはいることになる)
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