第58話 怖がりな住人

私が住むマンションには、とても怖がりな男の住人がいる。

夜になると、極力、部屋から出ないようにしていて、もし夜に出かける必要がある場合は、ライトとお札を握りしめて出かけている。

 

その男を見て、失笑する人も多い。

私もついつい、意地悪してしまったりもする。

 

その日は残業だったのか、その男の帰りが夜の12時過ぎだった。

案の定、お札をカバンの中から出して、お祈りしながらエレベーターのボタンを押した。

 

エレベーターが1階まで降りて来るのを、今か今かと待っている。

そして、ついに1階まで到着し、急いでエレベーターに乗り込んだ。

 

男は自分の部屋がある4階のボタンを押す。

しかし、3階でエレベーターが止まった。

 

私が押したから、当然なんだけど。

すると、男は慌てて3階で降りてそこから階段で4階に上っていった。

 

相変わらず怖がりのようだ。

 

終わり。














■解説

語り部は幽霊

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