第7話 精肉店
俺は精肉店を営んでいる。
人件費を浮かせるために家族総出で手伝って貰っているとはいえ、前まではそこそこ繁盛していて、家族4人を食わせていくのに不自由はなかった。
けど、例のアレでみんなが巣ごもりを始めるようになってからは、売り上げは激減した。
顔なじみが心配して、時々、買っていってくれる程度。
今では肉を仕入れることも厳しい状態になっていて、店を畳もうかとも考えた。
そんなとき、友人があるアドバイスをしてくれたのだ。
「今どき、ネットを使わないで売り上げを上げようなんて無理だよ」
俺は友人のアドバイスに従って、大勝負に出ることにした。
丸々1体を解体して、ネット販売をするという方法だ。
いやあ、最初は半信半疑だったよ。
本当に売れるのかって。
でも、そんなのは無駄な心配だったよ。
そりゃ、もう、バンバン売れたね。
むね、もも、かた、リブ、タン、ヒレなどなど。
口コミがドンドン広がって、ひっきりなしに注文が入った。
解体作業も大忙し。
本当、一人で店を回すのはキツイよ。
まあ、嬉しい悲鳴ってやつだよね。
そんな中、ある一通の注文が来た。
「足と手はありますか?」
へー。なかなか通だね。
わかっていらっしゃる。
次の日、すぐに送った。
さてと、そろそろ肉がなくなってきた。
また、仕入れないと。
終わり。
■解説
語り部は「丸々1体を仕入れた」と言っているが、「なにを」仕入れたかは語っていない。
豚、牛、鳥の部位には(腕と表現する部位はあるが)「手」はない。
つまり、語り部は豚、牛、鳥以外の「なにか」の肉を売っている。
そして、注文してきた人は、その「なにか」がわかっている上で「手」を注文してきたことになる。
また、始めは「家族総出」で店を手伝っていたが、今では「一人」で店を回している。
さらに、最後にはそろそろ肉がなくなってきたから「仕入れる」と言っている。
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