意味が分かると怖い話 解説付き

鍵谷端哉

第1話~50話

第1話 地縛霊

学生ってさ、お金がないもんでしょ?


いくら親に仕送りしてもらってるって言っても、結構、生活がカツカツなんだよね。

まあ、バイトでもすれば、いいんだろうけど、やっぱ、面倒くさいし。


となれば、やることは一つ。

出費を削減することだ。


そこで思いついたのは、家賃が激安のところに引っ越すというもの。

で、偶然、ビックリするくらい安い所を見つけた。


前のところと比べて、2万も安いんだよ。

学生の身分からすると、月2万円浮くのは、かなり嬉しい。


だけどさ、そういうところって、あれなんだよね。


そう、事故物件。


 


俺が借りた部屋は、かなりヤバいらしくて、何人も亡くなってるらしい。

でもさ、幽霊なんて結局は気持ちの持ちようでしょ?

気にしなければいいんだからさ。


それに近くの人に聞いてみたんだけど、部屋に出るっていう幽霊が、住む人によって違うって言うんだ。

ある人は髪の長い若い女って言ってて、その後は中年の男、その次は子供だってさ。


 


うーん。これはもう、嘘以外ないでしょ。

そんなにコロコロ変わるわけないじゃん。

ってことで、俺は気にせずに生活してたってわけ。


まあ、そりゃ、時々、変な音がしたり物の場所が変わってたりしたけど、無視してたんだ。

別に物凄い害があるわけじゃないし。


 


でもさ、それが段々、無視できなくなってきたんだよ。

変な音も、眠れないくらいうるさくなってきたし、物が無くなったり買った覚えのない物が出てきたりさ。


寝てるときに上から物が落ちてきたときは、正直、死ぬかと思ったね。

だから、あるとき、友達の知り合いに霊能力者がいるっていうから、格安で見て貰ったんだよね。


そしたら、やっぱり、地縛霊がいるんだって。

その人が言うには、なんか特殊な地縛霊らしくて、誰かを身代わりにするまで、その場に縛られて成仏ができないらしい。


だから、この部屋に住んでる俺を、あっちに誘おうとしてるって話。


 


さすがに安い料金じゃ、除霊まではしてくれなかったけど、霊から身を守る方法は教えてもらった。

それをすれば、しばらくは大丈夫だから、その間に新しい部屋を探しなさい、だってさ。


でもさ、それをやれば大丈夫なら、引っ越す必要はないんじゃね?

とにかく、俺はその夜、さっそく、その方法をやってみることにする。


 


まずは、体を清めるってことで、体に塩を塗り込んでからシャワーで流す。


で、次に……って、あ、バスタオルねーや。

とりあえず、ハンドタオルでささっと拭いて、と。


次は部屋の中央に日本酒と盛り塩を置く。

最後に部屋を真っ暗にして、祈ればいい。


簡単だ。

だけど、テレビが付けっぱなしだった。

だからリモコンを探したんだけど、見当たらない。

ちょっと、イラっとして、テレビのコンセントを引き抜いてやった。


そしたらさ、いきなり、バチンって音がして、部屋の中が真っ暗になったんだよね。


多分、ブレーカーが落ちたんだと思う。

まあ、真っ暗にしなきゃならないからちょうどよかった。


で、幽霊に、手出しするなって祈ったんだ。

そしたらさ、ビックリするくらい止んだわけ。

変な音もしないし、物が無くなったりもしなくなった。


いや、ホント、快適。

もっと早くやればよかった。


 


……って、思ってたらさ。

再開したわけ。


今度はさ、ハッキリと姿も見せてくんの。

俺くらいの年の男。


はー、面倒くせえ。

また、あの除霊をやらないとなぁ。


 


終わり。


 


 




 


■解説


主人公の男は除霊をやる際に、濡れた(塩を含んだ)手で、コンセントを触った際に感電死している。


部屋が真っ暗になったのは、意識が飛んだから。


また、一時的に幽霊が出なくなったのは、主人公の男をあの世に引き込んだ為、元々いた幽霊は成仏したから。


再度、出て来た幽霊の正体は、主人公の男の部屋に新たに契約した住人。


近所の人たちが言っていた、幽霊の目撃情報が違うのは、地縛霊が入れ替わっているためである。

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