僕が唯一の男子部員ですが何か?(短編)
夕奈木 静月
第1話 秘密の花園
「ねえ
廊下で担任の
僕は
せっかくの高校生活だ。帰宅部ではもったいない、具体的に動こう。
音楽系部活志望なので、軽音部と吹奏楽部を見学することにした。
「ごめん、もう一年の子たちもバンド組んじゃっててさ、四月中なら良かったんだけど……」
軽音部の部長らしき人は申し訳なさそうだった。
吹奏楽部のほうは見学で部室に入った瞬間から、期待なのか拒否なのかよく分からない視線を全身で感じた。部室全体を見渡したが男子は一人も見つからない。
「秘密の花園にようこそ」
三年生の女子が僕を出迎えてくれた。
それを言うなら『女の花園』だと思うが、無垢な僕はその言葉を深読みして赤くなってしまった。そんな僕に他の部員たちからも注目が集まり、やり場を失った僕の視線は床の木目を数えた。
この年代の女子って大人がぎょっとするようなことを結構言う気がする。男子以上に。
過去を思い返すと、周りがほとんど女子である書道教室などに通ったこともあったが、それでも僕以外に一人か二人は男子がいた。だから今回は次元が違うと尻込みしてしまう。
だが部室内に一人も同性を見つけられなかったとき、心の中でひそかに喝采を叫ぶ自分がいたことも否定できない。いや、別に何かを期待しているわけではない。ただ純粋に事実として男は僕一人なんだな、という感慨に浸っていただけだ。
前置きはこのくらいにする。結局僕は女子だらけ、いや女子しかいない吹奏楽部に入ることにしたのだ。
次回からはその部活の実態をつまびらかにしていこうと思う。
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