JK私、興味ないメガネ男振ったら、数年後大金持ちになってたのでメールして付き合った。

差掛篤

前編

高校の頃、付き合っていた人がいた。

眼鏡をかけ、照れ屋で、頭は良い理系の男の子だ。

勉強はできたが、デートコースは本屋と電器屋しか回らないような、そういうタイプの人だった。


ロボット工学に打ち込んでいて、その手の話になると止まらなくなる人だった。


わたしとしては、告白されて単にクリぼっちがイヤだったからOKした。

別に好きでもなかった。


だが、彼はとても情熱的だった。


「君に愛されない人生はなんの意味も、価値もない」

「僕が開発したロボットを君のために使う。約束する」


いつも彼はそう言っていた。


だけど、半年くらい付き合って振った。

野球部のイケメンが告白してきたからだ。

その人は爽やかな体育会系で、女子にも人気だし、いつも手下のような男子が群がっている。


つまり男子の中の人気者。


わたしはメガネくんをさっさと振った。いい人だから半年くらい付き合ったけど、野球部の爽やか君にコクられてどうでも良くなった。


メガネくんはわたしが振ったとき、本気で屋上から飛び降りるんじゃないかというほどヤバい顔をしていた。


爽やかなスポーツマンと、ロボットを作ってくれるという男、イケてる女子ならどっちを選ぶか聞くまでもないだろう。


それからメガネくんは学校に来なくなった。


ウワサじゃ転校したらしい。


それがメガネくんとの思い出。



若気の至りというのは誰にもあることで、自分の愚かさには年齢を経て気づくものだ。


私は十年後、都内でOLをしていた。大して大きくもない会社だ。

うだつの上がらない毎日。


腹立つ同僚、上司との日々。


高校の頃から付き合っていた野球部くんとは別れた。


愚かな私は、人気者がどのような振る舞いをするか…考える事もできていなかった。


私はメガネくんを捨てた。


だが、野球部くんは私と付き合って一年でチア部の後輩と仲良くなり、私が捨てられた。


結局そんなもんだ。


チア部の後輩は可愛くて人気だったから、適当に野球くんから乗り換えた事だろう。


そんな時、私はテレビでメガネくんが出ているを見た。


大臣と握手をし、演説していた。


彼は、いまやロボット工学の第一人者であるらしい。


高性能でありながら、安価な作業ロボットを開発し、国家プロジェクトとしてロボット拡大事業を展開しているそうだ。


相変わらずメガネはかけていたが、私にはとても彼が輝いて見えた。



彼の開発した作業ロボットは、脅威の速さで広まった。


携帯電話やスマートフォンより早く、爆発的に広がった。


危険な作業、面倒な作業、単調な作業などはすべて作業ロボットが行った。

さらに、「メガ・ネットワーク」という彼の構築した情報通信システムにより、ロボットと各種家電、スマートフォン、その他あらゆる電気機械や店舗に自分と情報が共有されるようになった。


要は、予定をスマホにいると、家電が動き、目覚ましがセットされ、コーヒーメーカーの予約が入り、外出前に浴びるであろうシャワーの湯温が調整される。

さらに服のコーデをAIが考え出し、外出時刻に合わせてタクシーが手配される…そういった便利な情報共有システ厶だ。


わずか1、2年でロボットが普通に街を歩くような世界になった。

そして、「メガ・ネットワーク」は世界に広まった。


もはや近所に外出するときも、海外旅行するときですら「メガ・ネットワーク」は欠かせない。


彼はもはや世界有数の富豪だ。


私は彼の頭脳と、優秀さに心奪われた。

恋に落ちたのだ。


やはり高校の頃、彼と付き合っていた私は見る目があったのだ。


悲しい結末で終わった恋だったけど…できればやり直したい。


私はそう考えるようになっていた。



しかし、私は自分のしたことを忘れたわけではない。どうせ相手にされないだろう。

私はそう考えながら彼にメールした。



信じられないことが起きた。

彼はすぐに電話をよこし、私に会いたいと言ってきたのだ。


私とメガネくんは再会した。


ブランドスーツを着込んだ彼は、目に涙を浮かべ喜んでくれた。


それからは夢のような日々を過ごした。


ハイクラスなパーティ

都心を見下ろすタワーマンション

クルーズ旅行、高級車

自家用セスナ、三ッ星レストラン

プライベートリゾート…


私の生涯年収分はありそうな宝石などももらった。


メガネくんは高校の時と全く変わらず、私を愛してくれた。


私はメガネくんをその分愛してあげた。


彼にここまでしてもらうのは、間違っていない。


彼がここまでの富を築いたのも、私の愛が欲しかったからだ。


冗談でそう考えていたが、日に日に真実味を帯びてきた。


彼は私を喜ばせるためには、金に糸目を付けず、何でもやったのだ。



私はバカらしいOLなどを辞めてしまった。


私を年増と笑っていた若い娘どもは明らかに嫉妬心をむき出しにしていた。


素晴らしくいい気味だ。


せいぜいしょうもない同クラスの男を捕まえることだ。


私がシンデレラなのだ。


1年ほど夢の生活を送ったとき、彼からプロポーズされた。


断る訳もない。


私は彼の妻になることに決めた。



そして、彼と私は結ばれた。


だが、一瞬、ことが終わって彼が仕事に戻るとマンションを去る時、氷のような目をしたのが見えた。

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