第70話 ガチャと金色コイン


 目の前に座るガチャの熱い視線を感じる。



 金色コインは餌ではないらしいが、摂取すると別の意味で満足感を得られるようだ。



 レバーがゆっくり動き、『ご飯ももうすぐできますし、できれば早めに投入してもらえると、こちらも助かります』みたいな動きを見せてくる。



「待て、まだ待てだぞ」



 ズリズリと這いずり、手に持つ金色コインに近寄ってきた。



「待て」



 もう一度声をかけたら、背筋をピンと伸ばし、きちんと座り込んで待ちの姿勢を取ってくれた。



「よし、ガチャるぜ!」



 俺は投入口にコインを入れると、レバーを優しく回していく。



 スキルの入ったカプセルを2つ排出すると、開けながら鑑定を発動させた。



 ―――――――――――――――――――――


 ランク:R


 スキル名:アースウォールⅠ


 種別:防御魔法


 効果:土属性魔法アースウォールを発動できるようになる。任意の場所に土の壁を築き、敵の攻撃を防ぐことが可能。


 障壁強度:30物理魔法ダメージカット(土の壁が破壊されるまで永続効果)


 クールタイム:60秒


 消費MP:20


 ―――――――――――――――――――――



 任意の場所に土の壁を作り出せる魔法か。



 スキルのクールタイムがめちゃくちゃ長いプロテクションシールドとは違って、クールタイムがかなり短いけど、その分強度も低くMPを消費する感じか。



 でも魔法もダメージカットしてくれる壁だから、緊急時の盾みたいな使い方をした方がよさそう。



 Rランクだから、スキルLVが上げにくそうな気もするけど、上がったら使い勝手はよくなりそうな気はする。



 防御手段はいくらあってもいいので、取得しとくに限る。



 ―――――――――――――――――――――


 ランク:N


 スキル名:魔力増加Ⅰ


 種別:パッシブスキル


 効果:MPが増える


 ステータス補正量:MP+10


 ―――――――――――――――――――――――



 もう一つはパッシブ系スキルだ。



 MPは自然回復するけど、戦闘が続くと不足気味になる。



 だから、直接数字が増える増加スキルはありがたい。



 これも問題なく取得っと。



 ――――――――――――――――――――――――


 ヴェルデ・アヴニール 人族 男性 


 HP168/168


 MP59/59→69/69


 STR:36 VIT:34 INT:14 AGI:8 DEX:18 LUK:13


 ジョブ:戦士Ⅱ《1》 魔術士Ⅰ《2》


 アクティブスキル:鑑定 解体 地図 ステータス隠蔽 診察


 パッシブスキル:『魔力増加Ⅰ』魔力増強Ⅲ 体力増加Ⅰ 体力増強Ⅳ 生命力増強Ⅱ 知力増強Ⅲ 器用さ増強Ⅱ 運増強Ⅰ 筋力増強Ⅱ 剣技向上Ⅰ 空間収納Ⅰ セカンドジョブⅠ 言語翻訳Ⅰ 罠解除Ⅰ 火属性魔法知識Ⅰ


 戦技スキル:ソードスラッシュⅠ 連撃Ⅰ 連続斬りⅠ キックⅡ 居合Ⅰ


 魔法:ファイアⅣ アイスⅢ ヒーリングライトⅢ ウインドⅢ プロテクションシールドⅡ ストーンブラストⅠ エネルギ―ボルトⅠ『アースウォールⅠ』


 装備:打刀50+25 シャーマンの20 チェインメイル《20》 鉄のショルダーガード《10》 守護の小手15 幻影の指輪 偽りの仮面


 基本攻撃値:96→111 基本防御値:59→89(物理シールド30/200) 基本魔法力:14(攻撃魔法のみ+10)


 SSR確定メーター:9/20 金色コイン残数:0


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 新規スキルの取得は2つだけだが、装備の更新した分も含め、以前よりも強くはなっている。



 いい場所に刃が入れば、ダンジョン内の魔物も一撃で倒せるやつがほとんどだが、一撃を耐えられると、反撃を食らいシールドの耐久値を削られたりする。



 それに遠距離からも狙ってくるし、油断はいっさいできない。



 明日からも調査の探索は続くので、よりいっそう気を引き締めた探索をした方がいいはずだ。



 金色コインを2枚摂取したガチャはお腹を見せて、気持ちよさそうにビクンビクンしている。



 ガチャにとっては、このコインがなにがしかの快楽になってるのだろうか?



「ガチャ、金色コインは楽しめたか?」



 だらしなく見せているお腹をさすってやると、我に返ったガチャが恥ずかしそうに俺の膝へ顔を埋めてきた。



 あの姿を見られるのが、恥ずかしいのか?



 スキルガチャに関しては謎の多い力だし、ガチャ自身も謎が多いわけだが――。



 照れる姿は可愛いぞ! ガチャァアアっ! はぁあああしゅきいい!



 おっといけない、いきなりテンションが上がってしまった……。



 膝に頭を埋めて照れているガチャの身体をわしゃわしゃと撫でてると、重圧のかかる探索の辛さを忘れ、ほっこりした気分になった。



「ガチャ様ー! ヴェルデ様ー! ご飯の支度ができましたよー!」



 アスターシアの声を聞いたガチャは、俺の膝に埋まっていた頭を抜き出すと、一目散にご飯に向かって駆けていった。

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