第51話 罠解除の仕方


 隠蔽ミミックを倒してからすでに1時間は迷路の中を歩き回っているが、ボスモンスターが居る部屋にはまだ到達できていない。



 途中で遭遇した魔物は、新種が2種類。


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 ホーンラビット LV8


 HP0/85


 MP0/0


 攻撃方法:突き刺し 突進


 弱点属性:なし


 解体時取得物:兎肉 立派な角 兎の毛皮


 解説:ウィンダミアの樹海の中に出てくる魔物。見かけとは違い、性格は攻撃的であり、立派な角によって急所を貫かれ、致命傷を負って倒される探索者もあとを絶たない。


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 尖がった角がとっても危ない魔物だったが、プロテクションシールドを破れず、攻撃を受けなかったため、さして脅威を感じる相手でもなかった。



 でも、シールドは削れたし、LV高いし、意外と強い魔物だったのかもしれない。



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 ハンド・オブ・ソーサラー LV9


 HP0/40


 MP0/40


 攻撃方法:ストーンブラスト アイス マジックシールド


 弱点属性:なし


 解体時取得物:なし


 解説:ウィンダミアの樹海の中に出てくる魔物。人の手の形をした魔物で、範囲魔法を放つ厄介な敵。魔法攻撃を無効化する障壁を発生させる魔法も使うので、駆け出し探索者が最も嫌がる魔物の一つ。


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 こいつはマジでうざかった。



 遠距離から範囲魔法を撃ってくるし、こちらの魔法攻撃を弾く障壁を出せる魔法まで備えてる。



 なので、こっちも守護の小手のシールドを展開して、ストーンブラストを掻い潜り、物理攻撃で倒した。



 駆け出し探索者が嫌がる魔物って解説にも納得のうざさだった。



 といった2種類の魔物と出会い、宝箱からはそこそこの大きさの魔石も2つほど見つけ、探索を続けている。



 通路の枝分かれや行き止まりも多く、かなり進化したダンジョンなのではという気がしてきた。



 未だにボスモンスターの部屋にも到達できてないわけだし……。



 そんなことを考えながら歩いていると、足もとの地面がガコリと沈む。



「はっ!? これ、まさか!」



「ヴェルデ様!」



 通路の前方から飛んできた矢が、俺のプロテクションシールドに当たって次々に跳ね返った。



「トラップだ! アスターシア、ガチャ動くな。まだあるかもしれない」



 いちおう、ガチャとアスターシアにも出発前にプロテクションシールドを張っておいてよかったぜ。



 危機感知してくれる直感もまだスキルLVが足りないから、完全には察知してくれないか。



 それにしても、ご丁寧に罠もあるのか……。



 って言うか、罠解除スキルが発生しないんだが? パッシブなんで自動的に解除判定されるのかと思ってたけど。



 違うみたいだな……。もしかしてアクティブスキル『罠捜索』とかあるのか?



 ……まさかな……。とりあえず、足元のくぼみを鑑定してみるか。



 凹んだ部分に手を触れ、鑑定をするとウィンドウが立ち上がる。



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 毒弓の罠


 ダメージ:物理攻撃力20(毒ダメージ3/治療しない場合1h)


 解説:通路の壁の中に仕込まれた弓から毒矢が放たれる。


 難度:5


 解除しますかY/N


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 っと、鑑定したら罠解除発動した。



 直感とかの危機感知→怪しい箇所の鑑定→罠解除って流れでやるのか。



 難度って数字が、罠解除の成功率を変化させるみたいだな。



 基礎成功率(DEX能力値依存)+成功率10%加算って計算式が出たが、難度の数字が基礎成功率を下げるようだ。



 現状の成功率は23%。



 4回に1回解除を引けるってところか。



 プロテクションシールドの残量はまだあるし、解除を試すとしよう。



「今から解除を試みる。そのまま、動かないでくれ。矢は当たらないから大丈夫だ」



「は、はい。お願いします!」



 YESを選択すると、自動的に身体が動き出していく。



 足元のくぼみを弄っていくと、カチリと音が鳴り通路内が光に包まれ、地面から飛び出した光の玉がガチャとアスターシアに吸収された。



 今の音と光、成功ってことだよな。



 足を動かしてみたが、罠が発動する気配はなかった。



「ふぅ、解除成功したらしい」



「お疲れ様です。それにしても、罠解除って、魔物を倒すのと同じように経験値が入るんですね」



「ああ、みたいだな。でも成功率は23%しかなかったわけだが」



「スキルが成長すると難易度が下がっていくという感じですかね?」



「そうらしい。にしても、罠まで設置してあるダンジョンってなると、意外と脅威度判定が高くなるんじゃないか」



「かもしれないですね。迷路も複雑、罠もあるし、魔物のLVも高い。明らかにGランクダンジョンって雰囲気ではなさそうですし」



「ボスモンスターも強いやつが出てくるかもしれないな」



「ですね。気を付けませんと」



 アスターシアと話していると、ぐぅーとお腹が鳴る音がした。



 ガチャが腹を空かせたのかな。さっき、けっきょくおやつあげ損ねたし、時間も――。



 手に入れた懐中時計を見ると12時を超えていた。



「ガチャ、お腹が空いたか?」



 足もとにいたガチャは、レバーを回して頭をブンブンと左右に振る。



 ん? さっきの音はガチャじゃないのか? ってなると?



 見上げた先には、アスターシアが真っ赤な顔をして両手で顔を覆っている。



「さっきのアスターシア?」



「ももも、申し訳ありません! 朝、探索の準備とかで買い出しを慌ただしくしていたら、朝ご飯を食べ損ねてしまいまして。外の休憩の時に食べればよかったんですが、ガチャ様とかヴェルデ様が水分補給だけされてましたので――」



 あわあわと慌てて真っ赤な顔で謝るアスターシアだった。



「すまん。そうだったのか、気付いてやれずに申し訳ない。すぐに昼休憩にしよう。俺は周囲の警戒をしてくる。アスターシアは準備を頼む。それと、これ食べてくれ」



 糖分補給用に買ってきてもらってた飴玉を彼女に差し出す。



 腹の足しにはならないが、空腹でぶっ倒れることはなくなるはずだ。



「す、すみません。頂きます……」



 アスターシアは受け取った飴の包み紙を取って、飴玉を口に含ませた。



「ああ、甘くて美味しい。すぐに昼食を作りますね」



「ああ、頼んだ。ガチャ、アスターシアの護衛を頼むな」



 レバーを回して応えたガチャたちから離れ、俺は休憩するため、周囲の安全確保を始めた。

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