【三題噺】マヌケ探偵 東一家

端役 あるく

イントロダクション・家族紹介

東、こたつ、恐怖の存在



1

掘りごたつ、真冬の体にこれが異常に沁みるのは動物としての一つの真理ではなかろうか。


温もりを享受されたいというのなら、こたつでも良い。だけれども、本当の意味での自然空間というか。完全を、満喫を求めるなら、掘りごたつである。


掘りごたつに一度でも入った者はその暖かさと、足元の自由さに打ちひしがれて、畳に寝そべることに対する欲求に耐えられることは無い。


それでも、僕、あずめ 京太郎きょうたろうという人間は耐えなければならない。


耐えることのできる忍びのような、つまりは忍耐強いという意味ではなく、これはただの自分ルール、人と話すときは目を見てを心情にしてるなのだけれど。

これは余談かな。

失敬、失敬。


さて、今宵は12月25日…が過ぎて一日、26日。

外でクリスマスを過ごしたのち、冷える体を明朝より、早朝、つまりは深夜0時過ぎに僕は掘りごたつに入っている。


赤赤と燃える火がリビングを暖める。

長い煙突がクリスマスとマッチする。

いや、もう終わったのか。


『〇〇市で泥棒、人呼んでアクション泥棒と呼ばれるジャッキー・ルパンが確認されたということで、警察は警戒を強めています。』

『不要普及の外出は出来る限り、無くすように、戸締りは十分に行うようにして下さい。くれぐれも発見しても、手出しは無用で逃げることを優先してください。続きまして、並んで空き巣被害が…』


「あらー、物騒ね。〇〇市ってことはここの近くじゃ無い?大丈夫なのかしら、京太郎?」

言葉を発しながら、服を外行きから、部屋着に着替えてきた母はカゴにどっさり乗ったミカンを持って、掘りごたつに侵入する。


持ち上げられるこたつ布団に吸い付くように暖気が逃げていく。

数瞬、冷える。


「大丈夫じゃない?確かに僕ら家族は外出はしていたけれど、使用人の蛭休ひるやすみさん、下の名前はねむるさんはいたんでしょう?」


「昨日は確かにねむるがいたわよ、25日はね。」


「あれー、ミーとウーがいないよ。兄貴知らない?」

母に続いて、妹がこたつに入場してくる。

これこそがこたつの魔力。誰一人として、こたつからは逃げられないということがここに証明された。


「知らないな。屋敷は広いからな。どこかしらに隠れてるんじゃ無いのか?」


「探したはずなんだけどね。ミーはともかく、ウーも居ないなんて。」

ここで、ミーとウーの説明を簡潔に済ませよう。

潔癖、いたずら好き、人見知り、やりたい放題、好き放題、従順なんて鼻にもつかない猫、自由なうちの飼い猫、メインクーンのミーと、頑強、従順、規律正しく、理路整然、妹よりも理路整然とする飼い犬、ドーメルマンのウーである。


名前にセンスというか、力が入っていないのは妹が幼少期に鳴き声だけでつけたと言うのが、本当のところなのだが、どうなのかな、この妹なら今の時分でもそれくらいで付けそうだけれど。

大雑把だし。


「おい、今、失礼なこと考えたよな?兄貴」

なんて勘が鋭いやつなんだ。でも、取り敢えず、「いいえ」

と言っておこう。


妹 あずめ 京香きょうかは「ピリリと来たから、そう思っちゃったよ。兄貴が嘘つくはずないから、気のせいだよね」と。


ピリリとか、更に高級なイマジンの話をするんじゃない。動物すぎだろう。

お前の本能、病院で取ってもらえ。

えーっと、連れていくのは、動物病院でいいのかな。


明日、予約取っとくか。

と、僕はスマホから近くの動物病院のホームページから時間を設定する。


「京香を揶揄うのは良しなさい。せっかく、パーティのお開きが早くなったのだから、家でくらい仲良くしていなさい」

と、母は言う。


パーティのお開きが早くなったのは、あなたが係の人にお開きにしろと命令したからではないかと思ったが、言わない。


母こと、あずめ 京子きょうこ

かの一大財閥の西さい家の一人娘。

と言う肩書は昔の話であり、今はしがない村娘(も昔の話か)、ただの一人の東家の母であるのだが、それでも、彼女のかつて所属していた場所の恩恵が無くなることはなかった。


正確には無くすことができなかったと言うことだろうが、そのおかげもあって僕らの生活の一部があるのだから、感謝しかない。


そんな母を、財閥から引っ張り出したのが僕の父である人。

父ことあずめ 京谷きょうやである。

まさに破天荒、自由奔放、行けるところなら、絶壁から、絶海まで、新天地を渡り歩く、探検家。


「おっと」

ここから、紹介が悪口にでも発展しかける展開で、部屋の隅々に配置された、謎の置物群に目が付いてしまった。


探検家の父のお土産という名のゴミの山が、こちらを見ている。

屋敷と言えど、家の皆がこの掘りごたつの一室に集まるのは、この芸術品(?)の山が所狭しとあるからだろうか。


母は一体、父のどこに惹かれて、かの名を捨てたのか。

まぁ、これはおいおいか。


ではでは、家族の紹介が、猫犬入れて、六名分。

全て終わったところで、イントロを締めよう。

マヌケな名前に、目が付いて、というよりも目に付く僕らのお話を、今日の出来事を始めよう。

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