第8話

▫︎◇▫︎


 ミルフィーユが婚約破棄をされ、王弟の娘であると明かした数週間後、急速に幾人かの貴族が力を失い、カヌレとカカオが国外へと無一文で旅立った。ちなみに、誰も彼女たちに婚姻祝いは贈らなかったらしい。娘を溺愛していると有名だった元伯爵夫人までもが贈らなかったと言う話を聞いたミルフィーユは、1人首を傾げることとなったが、その疑問に答えるものは誰1人としていなかった。


「叔母さま、わたくし、どうして王妃教育を受けているのでしょうか?」

「あなたが次代の王妃だからよ」

「ですよねー………、」


 そして、ミルフィーユは今王妃につきっきりになってもらって、王妃教育を受けている。ミルフィーユはあの求婚を婚約破棄事件で起きた王太子の戯言たわごとだと片付けようとしたが、うまくいかずに次期王妃に決定してしまったのだ。


「………あぁー、なんでわたくしなんかが王妃に………………」

「あぁー、やめなさい。あなたがそんなこと言ったら、ルイボスが廃嫡を望んでしまうわ」

「うぐっ、」

「母上、みーちゃんに変なことを吹き込まないでください。もしみーちゃんがそれで王妃になりたくないと言えなくなったら、どうするのです。僕は王太子の席など簡単に捨てることができるのに………」


 後ろからやってきてミルフィーユに抱きついてきたルイボスは、良い笑顔で断言した。そんな姿を見たあと、ミルフィーユは困ったように幸せそうな笑みを浮かべた。


「あぁー、そうそう、みーちゃん。キャラメル侯爵家に、アイスクリーム伯爵家、チョコレート男爵家に、モンブラン公爵家、イチゴケーキ伯爵家に、フラペチーノ男爵家が領地を売っぱらって貴族位の返却を求めてきたんだー。どうする?」

「? どうするも何も、好きにさせれば良いじゃない」


 この後、8つの貴族家が消えた。


 ミルフィーユは自分の笑顔のためにいくつかの家が消えたとも知らず、王妃として全ての民に優しい政治を敷いたと、後の世に名を残した。そして、夫婦仲が良過ぎたことも後の世に残ってしまったらしい。

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