第6話
▫︎◇▫︎
「みーちゃん、小さい頃からずっとずっと好きです!僕と結婚して妃になってください!!」
「はい!」
懐かしい想いに浸っていたミルフィーユは、ルイボスが何を言ったかも聞かずに、彼の言った通り大きな声でお返事をしてしまった。
(………ん?わたくし、今何に返事をさせられたのかしら?)
ミルフィーユは今頃になって不思議に思ってルイボスの言葉を思い返した。
(えっと、確か………、『みーちゃん、小さい頃からずっとずっと好きです!僕と結婚して妃になってください!!』だったかしら)
顎に指を置いたミルフィーユは、一瞬目をぱちくりさせた後に唖然とした。
「………ふぇっ!?」
ミルフィーユの悲鳴は会場内にこだまして、会場内にも驚きが走った。なぜなら、ルイボスはどんなに女の子に言い寄られても靡かず、木っ端微塵に振ると有名だったからだ。そして、会場内の貴族たちの男性ほとんどが理解した。あぁ、こんなに美しい女性のことを愛していたのだったら、他の女性などカカシにしか見えないだろう、と。
「ありがとう!みーちゃん!!みーちゃんのおかげで、僕は王太子を降りて公爵として一生独身を貫かずに済んだよ!!」
「えっ!?お、重いわよ!!」
「そりゃあ6歳の時に出会った瞬間から数えて、10年分降り積もっているからね!とっても重たいよ。覚悟しておいて」
ぎゅっと抱きつかれたミルフィーユは、相棒の眼鏡を落として、開いた口を塞げなかった。唖然とした間抜けな表情で彼にされるがまま頬に、額に、髪に、手の甲に、次々とキスが落とされていく。
「本当によかったー。このままみーちゃんが結婚したら、僕は
「………………」
(ねえ、わたくしの幼馴染は頭のねじが1本吹き飛んでいるのかしら?)
ぎゅっと瞳を閉じてほっぺたを引っ張ったミルフィーユは、頬が痛いことをみて泣きたくなった。泣き叫びたくなった。
「どうしたの?みーちゃん」
「な、なんでもないわ」
貴族諸侯はミルフィーユとルイボスの会話を聞いて、『いや、なんでもなくないだろう!!』と叫びたくなった。愛の重過ぎる王太子ルイボスは、平然と人を殺すと言ってのけたのだ。恐ろしいとしか言いようがないだろう。
「はあー、ほらほらルイボス殿下。周囲にドン引かれているじゃないですか。いい加減その執着と溺愛を引っ込めてください。そうじゃないと、ルイボス殿下のアフォガード嬢が好き過ぎるあまり起こした珍行動を綴った私の日記を、今この場で朗読しますよ」
平然とした軽口を本気の目と声音で言いながらやってきたルイボスの従者、タフィー・オランジェット公爵令息に、ミルフィーユは一瞬頬が引き攣ってしまった。彼はよくノートに何かしらをメモしていたが、それがもしかしなくとも『王太子の珍行動日記』になっていたのではないかと思い知ったのだ。
「た、タフィーさま、ご機嫌麗しゅう。今度その日記を燃やさせていただいても?」
「あははっ、アフォガード嬢、いくらなんでもそれはひどいですよ。私の生きがいなんですから」
「そ、そう………」
ミルフィーユは諦めも大事だと自分に言い聞かせ、震えそうになる身体を叱咤して美しく佇んだ。
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