第6話 堕ちた一軍
自分の御使いである井宮のことなど眼中にもないと言った様子で、スパーロは全員を見渡せる位置に移動した。
大勢の御使いを抱えるであろうスパーロにとって、、井宮は穿いて捨てるほどいる大勢の一人にすぎないのだろう。
信じた女神に見捨てられた井宮には悪いけれど、無様としか言いようがなかった。
みんなの注目を集めるようにスパーロは二度手を叩いてから、声を張り上げた。
「全員一緒だと魔王軍に一網打尽にされるかもしれないからあんたらにはパーティーごとに別々の場所に転移してもらうわ! パーティーの基本は5人前後。補助魔法役、魔法攻撃役、遠距離攻撃役から一人ずつ。あとは剣や槍みたいな近接戦闘役が一人か二人と言ったところかしら」
スパーロの指示で、みんなもう井宮のことなど無視して修学旅行時の班決めよろしく勝手に騒ぎ、歩き回り、仲の良い者同士で集まり始めた。
それから、足りない人員がいれば声を上げて探し始める。
その様子は本当に修学旅行の班決めそっくりで、つまりは俺の元へ来る奴など一人もいなかった。
むしろ。
「元和の奴、最低だよな」
「本当よね。せっかく井宮君があいつのために練習相手になってくれたのに」
「同級生の顔にナイフ突き刺すとかありえないわぁ」
「おいみんな、あいつは絶対パーティーに入れるなよ」
「わかってるわよ」
「てかあんな奴を入れる人いないでしょ」
井宮が俺を殺そうとしていたことには触れず、みんなで俺を悪者にしながらパーティーを組んでいた。
修学旅行の時よりもなお酷かった。
「最初に俺を殺そうとしたのは井宮だろ? なのに俺が悪者扱いか?」
「んだと?」
鼻にしわを寄せる連中に構わず、俺はズケズケと言ってやる。
「俺は一人でいい。俺からすればお前らと一緒にいるほうが危険だからな。いつ後ろから刺されるかわかったもんじゃないからな」
「テメェ……」
女子たちが非難して、男子たちが俺に凄味を利かせてくるも何も感じない。
「そんなことより、井宮を助けてやれよ。あいつ、片目が見えない状態で異世界に行くんだ。お前らの助けが必要だろ? 友達なら助けてやれよ」
俺の言葉にみんなは怯んだ。
「い、いや、うちはもう五人そろっているから……」
「うちはもう剣士いるし」
「あたしたちは女の子グループって決まってるから……ねぇ?」
みんな気まずそうな顔で隣近所と顔を見合わせながらうろたえる。
ようするに、みんな井宮を仲間にしたくないのだ。
日本にいた頃、長身イケメンでバスケ部レギュラーで読モの井宮は一軍だった。
誰もが井宮を自分よりも格上の存在だと認めご機嫌取りに奔走していた。
けれど、四軍生徒の俺に敗北した今、みんなの中で井宮の存在価値は急転直下したに違いない。
哀れだとはおもうが同情はしない。
今まで自分が笠に着ていたカーストルールが、今度は自分に牙をむいただけ。
全ては井宮の自業自得だ。
「じゃあコノハ、異世界に頼む」
「うん、任せて」
コノハがにっこり笑うと、俺の足元から強い光が溢れ出した。
「おっ?」
まばゆい光に目を奪われて目を閉じると、まぶた越しにも感じていた白い光が消えてまぶたの裏が暗くなる。
一陣の風が草の香りを運んできて、俺は目を開けた。
そこはさっきまでの白い空間ではなく、木々が豊かに生い茂った美しい森の中だった。
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