「カフェ ほのぼの」へようこそ!

きみとおさる

1杯目 年の終わりで。

今日は大晦日。一年の締めの日だ。

何かいつもと違うことをしたくて、街中を歩いていた。


家から歩いて10分。

あまり行かない路地裏に入ってみた。


小さな雑貨屋。

蔦が絡む廃墟。


カフェがあった。

『カフェ ほのぼの』と、看板が掛かっている。

家からも程よい距離だし、入ることにした。


――カランカラン


「いらっしゃいませ」


優しそうな30代くらいの男性(これからはマスターと呼ぶことにする)が出迎えてくれた。


店内はアンティークな家具で統一されていて、

店内に入るとふわりとコーヒーの匂いが香った。


手前にあった椅子に座り、そばにあったメニューを手に取る。


「こんにちは。今日で今年も終わりですね。」


あっちの方から話しかけてくれた。


「そうですね。」


「あなたはここに来るのは初めてですか?」


「はい。」


「初めてにはこのほのぼのコーヒーがおすすめです。温かくて、この店の看板メニューですよ。」


「じゃあ、それをお願いします」


結構フレンドリーな人だな。

この店は暖房が利いていて、外に比べてとても暖かい。だが、店内には私とマスターしかいないから、少し罪悪感がある。


「はい、できました。ほのぼのコーヒーです。」


「ありがとうございます。」


少し冷ましたあと、一口飲んでみた。

ちょっと熱いけれど、美味しい。

一口目より丁寧に冷ましてから、二口目を飲んでみた。

美味しい。心に沁みる。

丁寧に冷ましたからいい温度になっている。

外が寒いということもあって、とても美味しく感じる。


「どうですか?美味しいですか?」


「はい!とっても美味しいです!」


「お世辞でも嬉しいです!ありがとうございます。」



会計の時間になった。

価格は500円と、お手頃なワンコイン価格だった。

マスターに聞くと、ご来店2回目からはワンコインでデザートがつけられたりするらしい。


「またのご来店を お待ちしています!」


店を出たけど、心も体も温かい。

いままでで一番美味しいコーヒーだったかもしれない。


また来よう。

そう思って店を出た。

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