8.狼牙王
森の外付近まで飛んで行ったら、女の子が三人森に入ってきた。
弱弱しい足取りだが、怪我はしていないようだ。
「大丈夫?」
声をかけたら、たすけてと言われた。
(えっと、まずはどうしよう)
とりあえず、その場に座ってもらい、森の奥に行って食べられる実をもらってくる。瑞々しい実だ。のどもうるおうだろう。それから、彼女たちを襲わないようにお願いする。
彼女たちの元に戻って実を渡し、食べ終わるのを待って話を聞いた。
きれいな銀髪のルナと名乗った少女は、ここに来るまでの経緯を話してくれた。
(小鬼族が襲ってきた?アタおばさんから、狼牙族は強いと聞いていたけど、小鬼族がそんなに強いだなんて教わらなかったけど)
小鬼族がそんなに強いなら、この森にも攻めてくるのだろうか。森のみんなが負けるとは思えないが、怖く感じる。
彼女たちは、シン様に頼んで森でかくまってもらおうか。ジッと彼女たち、特にルナさんを見るとふつふつと食欲が涌く。
「森でかくまってもらおうと思うんだけど、その前に少し血を飲ませてほしい」
僕の願いにルナさんはうなずき、手を差し出した。かぶりつく。
(おいしーーー!濃厚で、ワイルドな風味。力が湧き上がるう)
「ウオーーーー!」
つい抑えきれず、叫ぶ。力が体中にめぐり破裂音と煙のあとに、大柄な金髪の男の姿があった。
ちらりと、ルナさんの弱った姿をみて怒りが湧く。
「報いを、受けさせよう」
僕は、森の外に駆け出した。
森の外には、大勢の魔族がいた。
(こいつらが、小鬼族か。小さいが数はいるな)
腰から鉈のような大剣を抜き放ち、小鬼族に斬りかかる。小鬼族は人族の様に鎧を着込んでいたが、そんなものは何の意味もないかのように切り裂かれた。
いったいどれほど斬ったのか。動くものはいなくなっていた。
すると、新しい小鬼族の軍が迫ってくる。先程の、剣や槍を装備しているだけでなく、魔獣にまたがるもの、矢を放つもの、魔術を使うもの、様々である。
(小賢しい!)
力を込め、金色の狼の姿に変化する。狼牙族の獣化だ。金色の毛皮は矢も魔術もはじいた。
そこからは、一方的な蹂躙だった。狼の爪に切り裂かれる小鬼族たち。最後に豪華な鎧を着込み、大きな魔獣にまたがった小鬼族を大きな牙でかみ千切る。
動くもののいないことを確認して森に帰ろうとしたら、狼牙族の少女ルナが跪いていた。
「狼牙王サマ」
彼女に王と呼ばれる。すると、体から煙がではじめる。変化の終わりか。
ボンと破裂音がしたあとには、金髪の大男と毛玉のようなコウモリがいた。
「あ、あれ?なんで!」
コウモリの僕は思わず叫んだ。
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