残り香♯0

ひとつ はじめ

seen1-私1

テレビをつけると“ひたすら試してランキング”が始まっていた。今日はスライスチーズ編らしい。最初から見られることが減ってきて、いつものように最後の順位だけをかろうじて見れた。オープニングトークの時間にはめったに起きれない。

私の部屋にはニンニクの匂いが充満し、同じくらい漂っているはずの油とアルコール臭をかき消していた。

消臭機能があるとのキャッチコピーに釣られポチった淡いミントのカーテンは、力及ばず朝日にさらされ心なしか申し訳なさそうだ。


昨日は気兼ねなくビールのアテにニンニクの丸揚げに味噌を付け1週間の疲れを癒したので、室内は独特の香りで満たされている。私の吐く息も同様。はー幸せ。


毎週金曜の夜、私はニンニクを嗜む。お酒が主役ではなく、ニンニクに合えばご飯でも良い。平日は仕事で人に会うので我慢に我慢を重ね、その我慢が私を至福の時に連れて行ってくれる、もはや違法な何かのようだ。

私は女だからいってと週末は彼氏とデートか習い事なんていうステレオタイプではないので、誰とも約束のない週末はニンニク臭い。つまり毎週末、臭い。


パジャマのままで狭いマンション特有の通路兼キッチンに向かう。冷蔵庫から缶入りのカフェオレを取り出し、寝起きで力の入らない右手でなんとかキャップをはずし2口ほど流し込む。ノドから胃にかけて冷たい液体が通る感覚が徐々に私の覚醒を促す。

ふっと指を鼻先に近づけると香ばしい匂いがした。


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