第62話 心地良い眠り リダ ミルカSIDE
「ふぇ~凄く気持ちいね…ありがとうリヒト」
目の前でリヒトはミルカの髪を乾かしている。
私の髪はもう既に乾かして貰った後だ。
女として大切な穴や汚い穴にまで指をいれられたのは恥ずかしいけど…本当に汚かったのだから仕方が無いよね。
昔からリヒトはこうだった。
私や他の皆は不満を言ったり、セクハラだと言ってかなり文句を言っていたけど…今日の行為を見たら、あれは優しさだった…それが良く解るよ。
『馬鹿だな』
堕ちる所迄堕ちて…初めて…リヒトの優しさが解かるなんて。
何処までも誠実で…こんな状態の私達にも手を差し伸べる位、優しい人。
『どんな時もリヒトは何時も味方だった』
そしてそれは今も変わらない。
優しいなリヒトは…本当に
◆◆◆
「今日の夕飯は、ハンバーグモドキとオムライスにしました~二人とも好きだったよな?」
奴隷の私達の為にご馳走を作ってくれた。
リヒトの作る料理の中でも私もミルカも大好物だった物だ。
今なら解る、リヒトって凄く誠実で優しい人だったんだな。
「久しぶりだな…リヒトの…あっごめん、ご主人様の料理」
「本当にありがとう…これ大好物だよ…そのご主人様」
「確かに二人は奴隷かも知れないけど、ご主人様はやめて欲しいな…リヒトで良いよ」
「そう…本当に良いの? それじゃそう呼ばせて貰うよ」
「それで良いなら…リヒト、これで良い?」
「それで良いよ…それで食べられる? 難しいなら食べさせてあげようか?」
奴隷になった私達への気づかい。
普通なら絶対に考えられない。
どう考えても、これは奴隷に対する扱いじゃないよね。
「それは大丈夫だよ、私は利き腕じゃないから」
「私は…ゴメン!ゆっくりになるけど、どうにか頑張るよ」
「確かに、ミルカは大変そうだな…仕方が無いな」
ミルカを持ち上げて膝の上に乗せたよ…昔ならセクハラだ、エッチだ。そう騒ぐけど、今ならそれが純粋に親切なんだって解かるよ。
だって私達は奴隷なんだから、抱きたいなら押し倒せば良いだけだもの。
「ちょっと…リヒト、これ恥ずかしいよ」
ミルカ、顔が真っ赤だね。
よく考えたら、こういう純粋な愛情なんて余り経験が無かった。
無理も無いな。
「良いから、ほら、あーん」
「リヒト…これ」
「奴隷だから拒否権は無いよ…」
「解ったよ、あ~ん…これで良いのかな」
凄く優しい命令。
これがリヒトの言う『自由にさせて貰う』って事なんだ。
なんて優しい身勝手なのだろう…
「どうだ…美味しいか?」
「美味しい…凄く美味しいよ…グスッ、スンスン」
そりゃ、泣くでしょう。
今のミルカが優しくされればさぁ。
「何故泣くんだ? 美味しいなら笑ってくれよな。ほら食え、あ~ん」
こう言う所は本当に鈍感で朴念仁だよね。
「グスッ…ありがとう…あ~ん、モグモグ…ありがとう…リヒト、本当にありがとう…」
リヒトは凄く優しい。
そんな事は知っていた。
子供の頃から誰よりも優しくお人よしだったよ。
そして、今もそれは変わりない。
多分、本当の意味で優しかった唯一の男性なのかも知れない。
傍に居て、いつも優しくて…それが当たり前だから見逃していたんだね。
まるで…太陽のような人。
そばにいるだけで幸せにしてくれるような人…それがリヒトだって。
「どうした?リダ…やっぱり食べにくいか?」
不意打ちだよ。
「えっ…そんな事…ううん片手だから食べにくいよ…」
折角だから、私も甘えちゃおうかな。
「仕方ないな…ほらこっちに来いよ…」
「えっ、リヒト…」
「悪い、ミルカ、降りてくれるか?」
「…はい」
今一瞬ミルカの奴不貞腐れた顔をしたよ。
ミルカも多分、気がついたのかも知れない。
「それじゃ、ミルカの横に座って、交互に食べさせてあげるから…ほら、あ~ん」
「「あ~ん」」
昔、お母さんが言っていた。
『恋愛なら、兎も角結婚するならリヒトくん一択だわ…私があと10年若ければ放って置かないのに…』って…
その意味が今なら凄く解るよ。
優しくて、家事は万能…それでいて働き者。
カイトとも他の男とも違う、外見じゃない言葉に出来ない魅力がある。
多分これが『包容力』って物なのかも知れない。
最高の男じゃない…
◆◆◆
「ねぇ、ミルカ起きている?」
「起きているよ…正直言って眠れないよ…体が火照っちゃって」
私も同じだよ…リヒトの事を思うと眠れない。
「やっぱりね…もしかしてリヒトの事考えていたのかな?」
顔を真っ赤にしていれば嫌でも解る。
「うん…リダは兎も角、私は利き腕が肩から無い…これじゃ杖なんて持てないから、只の役立たずなんだよ…そんな私をまるで宝物みたいに扱って…汚い所を綺麗に洗ってくれたの…今思えばスラムの売春婦以下に汚くなっていたと思うよ、SEXとお酒におぼれて、そのままワイバーン討伐、確かに奴隷商でシャワーは浴びたけど片手だから満足に洗えて無かったよ…妊娠しない事を良い事に中に出しぱっなしだったし…普通に考えたら汚くて当たり前だよね…でも知らなかったんだ…その喪失してからそういう手入れが必要だなんて…ゴミ女って言われても仕方が無い…汚い状態だったんのが良く解ったもの…よく酔っぱらってロマンスクラブに行っていたから、お風呂はおろか今思えばシャワーもいつの間にか浴びなくなっていたし…しかも、どう見ても『男の物の白い』のが渇いた物までついていた…そんなゴミみたいな女をリヒトは…まるで宝物みたいに綺麗にしてくれたの…片手が使えない役立たたずなのにね…他の男と大違いで優しい、なんて言うのかな?」
「包容力でしょう」
「そう、それ半端ないよね。私イケメンに囲まれて生活するより…今はリヒトと一緒の生活の方が楽しい…そう思えるよ。もしロマンスクラブを私にくれる…そう言われても今の私は絶対、リヒトを選ぶ自信があるよ」
「そうね…私も同じ…今の本当のどん底の私でも大切にしてくれるんだから、本当に…どうして良いか解らないよね。それに、態々奴隷として買ったんだから…多分したい筈なのに…言って来ないんだから…大切にしてくれているのが良く解るよ」
「それでね…リダ、これから私リヒトの所に行ってこようと思うの…私がリヒトに出来る事なんてそれしか無いから…ここまで大切にしてくれるんだもん、答えてあげたい…」
「確かにそうだよね…それ以外、多分私達に使い道なんて無いから、行こうミルカ…」
「うん」
リヒトは大きなベッドを私達に渡して自分は隣の部屋の小さなベッドで1人寝ている。
私とミルカは服も下着も脱いで裸になった。
片手じゃ上手く脱げないから、最初からこの方が良い。
「リヒト…リヒト、起きて」
「…リヒト」
「二人ともどうした?もしかして腕が痛むのか…なんで裸なの?」
「リヒト…私多分これからも迷惑かけると思うし…こんな事でしかお礼が出来ないから…良かったら抱いて…」
「私もそうだよ…こんな肩から腕の無い体で良いなら…抱いて、それとも私からしてあげようか?」
凄く心臓がドキドキした。
今迄のSEXとは多分違う…
顔も体も熱くなる。
そして…月明かりで見たリヒトは…凄い美少年に見えた。
これは気がつかなかったな。
髪をかき上げた状態だと…カイト以上にカッコ良いかも知れない。
時が止まったような気がした。
そのままリヒトが口を開くまで、凄く緊張した。
「風邪ひくよ…」
「「えっ」」
そう言いながらリヒトは私達の服を持ってくると着せてくれた。
「あの…私、こんなことでしか返せない」
「服を脱ぐの、凄く勇気がいったのに…そんな」
「そう言う事は、本当に好きになってくれてからで良いんだよ。SEXなんて物は愛してからするものだよ」
「「リヒト…」」
リヒトは私達の顔を見ると笑っていた。
「だけど…そうだな、それじゃ久々に一緒に寝て、話でもしようか? そうだな、ワインでも持ってくるよ」
そう言うとワインボトルとグラス三つをサイドテーブルに持ってきて注いでくれた。
「はいどうぞ」
「「ありがとう」」
リヒトって…こんなにカッコ良かったのかな。
月明かりで見たリヒトは驚くほどカッコよく凄く大人に見えた。
それから、昔話をして思い出を語り合い、その後は楽しい話を沢山してくれた。
ワインを飲み終わり、リヒトを中心にして三人で寝たのだけど…
リヒトはまるで宝物のように私やミルカの髪を撫でてくる。
それが凄く嬉しくて心地よい。
それが嬉しくて私もミルカもリヒトの胸に顔をあてがうようにしがみ付いて寝ていた。
リヒトの心臓の音がトクントクンと聞こえてきて凄く心地よい。
参ったな。
本当に参った…
どんな美少年との情事より…リヒトの胸で寝る方が心地よく感じる。
それは多分、ミルカも一緒の筈だ…
多分これが『恋』なのかも知れない。
どんな美少年との情事より、最高のお酒を飲んでいる時より、ただただリヒトに抱かれている…今が気持ち良い。
気がつくとミルカは安心したかのように眠っている。
私も久々に心地よいなか…眠りに落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます