第38話「とある人物との遭遇」

「えっ、冒険者として復帰の許可が・・・?!」

「あぁ、国王からの連絡が来てな」


数週間、十分な休みを満喫した僕らは会議を始めていた。


「スタヴさん、国以外からもその声明は?」

「あぁ、聞いている。イチから冒険者をやり直しても問題無いそうだ」


そう、エリデリアの冒険者復帰の許可が下りたと言う事。


「~~~~~っ!有難う御座います!」

「これで、心置きなく冒険者としての仕事頑張りな」


一週間後――――


「師匠!起きて下さい!」

「うわぁッ?!」


とある朝――――みんなでいつもの朝食をしていた。


「痛つつつつ・・・」

「まぁた弟子エリデリアに起こして貰ってるのか、ゼクター」


件の事件がやっと解決したエリデリアはすっかり元気を取り戻し、いつも以上に張り切っていた。


「普通の休みだってのに、のんびりさせてくれよ~」

「食事の時間帯ぐらいは起きて下さい」


呆れて溜息を吐くゼクターに対して彼の痛めた腰に思いっきり叩き込んだ


「アダァッ?!」

「さて、師匠は放っておいて先に食べましょうか」

「「アッ、ハイ」」


僕の傍に居たナルは僕と同様にエリデリアの行動に若干引いていた。


「・・・そうだ、命日とかではないだろうけど、墓参りはどうすんだ?」

「あっ、それなら今日行きますよ。然程遠くない距離で埋葬させて貰いましたし」


実は当時の事件が起きる前――――死体を知り合いの墓地に埋葬させて貰ったそうだ。

そこの墓地は特殊な結界で囲われているらしく、アンデット系の魔物は一切出てこないそうだ。


「不老不死とアンデットに近い力を持ってる俺の場合だと具合が悪くなりすぎて墓参りできそうにないな」

「それなら僕とナルが同行して良いかい?」

「お願いします」


今回はゼクターとスーミラ含む何名かが留守番となった。


「・・・着きました。ここが婚約者の」

「そうか」


墓場まで歩きで三人で来た。

僕が先に手持ちの花束を置き、水を窪みに注ぐ。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」


無言で手を合わせ、祈る。

暫くしてから墓参りを終えた。


「さて、帰りは買い物でもするか」

「ですね」

「荷物持ちお願いしますね」


買い物を十分に済ませ――――


「お金の事、代わりに有難う御座います」

「いや、良いさ。どのみち僕の手持ち、ギルドに預けてある分減らしておかないといけなかったし」


お金の溜め込みは上限がある。

上限以上を溜め込み過ぎると却ってギルドの職員の仕事の負担が大きい。


「さて・・・ん?」

「どうかなさいました・・・か?」


僕の視線の先に――――とある人物がいた。


ラゲリル・ベイタ

「・・・おや、スタヴさん。お買い物ですか」


「よっ、久しぶりだな。ソロで冒険者活動か?」


彼女はラゲリル。

昔に一度、僕や他メンバーの弟子の件で結局付いてこれず、自ら辞退した人物である。


「――――そう言えば、私の知らない間にまだ一人、欠如してるみたいですね?」

「あぁ、そのお陰で本来のこいつ等の弟子を育てるってプランがダメになってな」


ラゲリルは少し考え始め――――


「判りました。もう一度、試験を受けさせて下さい」

「おっ、ついに決心したか」


彼女は俺に似たタイプの人間で魔力の扱いが非常に厄介なほど苦手とされている。


「最近までどのようにやっておけばいいか、しっかりと修行しまして」

「ほう、その成果を見せてくれるんだな?」


直ぐにクランハウスに連絡を入れる。


『えっ、ラゲリル先輩が漸く覚悟を?!』

『聞いたか!?直ぐに準備始めるぞ!』


通信の先で色々とわちゃわちゃしている。


「ゼクター、ギルマスに試験会場借りれるか話しとおしてくれ」

『判った!任せろ!』


暫く経ってから三人でクランハウスに着く。


「ラゲリル先輩!準備が整ったのでギルドへお越し下さい!」

「判ったわ!それじゃ、行って来ますね」


ラゲリルは自分より年下の後輩と一緒にそのままギルドへ足を運びに行った。


「アイツ、漸くか」

「あぁ、結果が楽しみだよ。僕は」


数日後――――


「合格?」

「えぇ、コレで正式に幹部補佐です」


やっと合格し、正式にメンバーとして迎い入れたラゲリルは再び他メンバーと一緒に活動する事が許可された。


「それではゴールドさんとナヴァンス君とエリデリアさんとで最新の任務に行ってきますね」

「あぁ、気を付けてね」


こうして、弟子四人の枠が埋まった。

後は、アイツらが自分たちの弟子にどのように稽古をするのか、楽しみで仕方ない。

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