第32話「セント王族の真実」

帰宅後――――


「話があるって聞いたけど・・・何かあったのかい?」

「私たちの事に関してかしら?」


どうやら戻ってくるまでの間に蟠りが無くなったようだ。


「実は―――――」


セント王族の真実についての事、そしてギルス兄さんの意思について出来る限り話した。


「そんな事が・・・」

「この手紙に着いては・・・上位貴族の面々にのみ話を出した方が良さそうね」


二人はそう話し合い、再び僕を見る。


「さて、ここからは現実的な話だ。スタヴ、お前の意思を問いたい」

「この国に居座るか・・・自身が育った国に帰るか」


「どうする?」とリベレラ姉さんに言われた僕は・・・迷わず


「勿論、僕は育った国に帰るとするよ。あそこにいる仲間と共に育って来た弟子達を残す気はないからね」

「・・・そうか」


ナイトメア兄さん達は苦笑し


「そう言うと思ったよ」

「少なからず、この国では貴方の生存を知った国民達が多く居るの」


「本当はこの国に留まって住んで欲しい気はあったけど・・・」とリベレラ姉さんは言葉を少し詰まらせ


「貴方の気の迷いがなくて安心したわ」

「姉さんは・・・アレから婚約者さんとはどう?」


僕がそう聞き返すと、リベレラ姉さんは嬉しそうに顔を赤らめ


「実は近い内に結婚を済ませる事にしたの」

「へぇ~・・・つまり王位降下?」


ナイトメア兄さんは頷き


「いずれ貴族位に降下する予定ではあるから・・・後はリベレラの隣に立つ程の意思があるかどうかだね」

「成程」


他の三人もそれぞれ思う事はあるみたいだ。


「ナイトメア陛下、一つ聞きたい事があるんだけどよ」

「何だい?ゼクター殿」


ゼクターはセント一族が王族になる切っ掛けを問い出した。


「セント一族って王族になる前は貴族だったのか?」

「あぁ、もっとも最古の歴史があるのがセント一族でね。初代から今の代になるまでの歴史に関する書物も厳重に管理してある。私が喋れる範囲でなら話そう」


先ず、セント一族は元は農民と同位だったそうだ。


「農奴とは違って多少は裕福な家庭から始まったんだ。一人の無名の男からね」

「成程」


その地には異種族での争いが昔から絶えない日々が続いていたそうだ。


「で、名乗り上げたのが無名のセント族。一族になる前の族長の息子が代わりに導くリーダーとして皆を引っ張っていたそうだ」

「その時の記述が―――こちらであります。当時のまだ無名だったセント族の長の息子の孫が記載したそうです」


宰相からその古い伝記を受け取り、確認した。

確かに似た記述が記されていた。


「セント族が王族として崇拝に近い形で担ぎ上げられるまでは長い道のりだったそうだよ」

「成程」


更にその伝記には魔法を使う事が出来たのが――――とある一人の男だったそうだ。


「その男は後にセント族の特有の力を秘められていると気づいたらしくてね。自らを師範としてセント族の一人息子を一人前の人間として鍛え上げたそうなんだ」

「私もこの歴史を初めて知って驚いたのよね」


セント族は男が特殊な力―――今で言う【星帝】の力を秘めているとされていて、

女性の方では魔力はあったそうだ。


「男はスキルを駆使し、女は魔法を巧みに操る。セント族の前座までの一族面々はそうやって教えられながら記録を残したらしい。因みに、この伝記もその一つにされているんだ」

「それじゃ~、セント族の長命なのはどう言う経緯なの?」


スーミラが言葉でズバッと切り出す。


「あぁ、確かゼクター殿は不老不死の一族だね?」

「弟と一緒に当時、まだ長生きしていた村のおばばから聞いてます」


ゼクターはナイトメア兄さんにそう言う。


「実はセント族は初代とその初代の師範が切っ掛けで不老不死に近い長寿の命を得たと聞く。この話はまだ解明されてないけどね」

「でも実際に僕らや兄さん達以外の面々は年を取っているようにじーさんばーさんになっているって事だよね?」


僕がそう聞き返すと、リベレラ姉さんは頷き


「それもセント族の長命の原因と捉えて構わないわ」

「成程、それでは――――」


ナルは眼鏡をクィッと指で縁を直した。


「その二人の代から徐々に師弟関係の事も【星帝】スキルが発覚した時も常にって事ですね?」

「そう言う事」


そして今もなおセント族は王族になって以降も王政交代する時以外は長生き続きらしい。


「まっ、いずれ病気になった時は納め時って決めてるんだ」

「全く、不謹慎よ」


そう言えば・・・


「不老不死を持つゼクターの家系って確か―――」

「俺の母親が昔の話をした事があったな」


ゼクターの先祖は弟子を持つ事があり、更にはその弟子が大成した時に自身の不老不死の力の末端を教えたとされているらしい。


「つまり・・・長寿の元はゼクターの先祖のお陰って事か」

「すげーな、ある意味」


僕の体がゼクターの体と適応したのもそれが理由なのかもしれない。


さて、そろそろ・・・


「僕らの仕事はもう終わり。さっさと帰る事にするよ」

「そうか、ならここの皆に挨拶していきな」


ナイトメア兄さんに言われた僕は頷いてメンバー全員であいさつしに回った。

挨拶を終えて皆に見送られながら徒歩で駅まで歩いて行く。


「いや~、にしてもどっと疲れたな」

「弁当買って帰り際に食べる?」

「良いですね、そうしましょう」

「到着するまでに時間掛かるから食後に仮眠しとけよ~ゼクター」


駅内で弁当を買い、それぞれ食事を楽しみながらゆっくりと車内で寛ぎ始めた。


「しかしま~室内付きの車両を利用することになるとはな」

「このソファーがベッドに早変わりするのも凄いよな」


ゼクターはその後の数分後にすっかり寝入ってしまった。


「・・・お疲れ様です。帰宅した後は暫くは休暇にしましょう」

「そうだね~、次の日にギルマスにそう連絡して貰える?」


こうして、やっとの事でクランハウスに帰宅したのであった。

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