第15話 Spring is me ~ハルミは春~

 政府の気候対策が功を奏し始めたころ――わたしは春らしい季節に、春泉ちゃんのことを重ねていた。


 未咲「なんだか、この季節は春泉ちゃんって感じがする……」


 あったかい。その言葉がよく似合う子だったと思う。いまでも亡くなったことが信じられない。


 未咲「この世に復活の呪文があるわけでもないし、もうわたしのおなかに新しい命は芽吹いてるから……」


 そう、わたしはめでたく妊娠していた。進くんとたくさんの夜を過ごしてきたから、いつかその日は来ると思ってたけど。


 未咲「この前は玲香ちゃんの豪華な結婚披露宴があったし、もうわたしたちに関しては言うことなさそう……あとは春泉ちゃんがいれば……」


 何度願っても戻ってくるわけではないので考えるだけ無駄ではあるんだけど、やっぱり考えずにはいられない。大丈夫、命はちゃんと巡っている。


 未咲「なんでだろ……なんだか泣けてきちゃった」


 ぬぐうハンカチも見当たらない。部屋の中を探してようやく見つけたそのハンカチ。もういくら涙を吸わせてきたことか。


 未咲「『この春はハルミそのものだよ』って言ってる気がするんだよね……ううん、絶対に言ってるはず、そう聞こえたもん」


 神が与えてくれたプレゼント。そう思わずにはいられなかった。

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