第31話


「ぅう『ダークヒール、ダークヒールぅ』ぅうっ、ひぐっ」


「よーしよーし、痛かったねぇ、頑張ったねぇ。えらいえらい」


 吹っ飛んだ地面の上。頭を撫でられながら、俺はひん曲がった腕にヒールをかけ戻してゆく。もうやだ怖い。こいつのスキル怖い。痛いのやだ冒険者やめるぅ。


「はぃぎゅー」


 ……冒険者続けるぅ。


 ミュゥの胸の中でポロポロと嬉し涙を流す俺の元に、爆音を聞きつけた農婦さんが駆けてくる。


「ちょ、何があったんだい⁉︎」


「おにーさんが頑張りすぎちゃって、ほらよしよし」


「しくしく、しくしく」


 農婦さんは頭を掻き、地面に突き刺さったミノさんをツンツンする。


「み、見かけによらず凄いね君達。まぁ何があったかは分かんないけど、討伐完了だね」


「畑こんななっちゃったけどぉ、だいじょーぶ?」


「しくしく」


「問題ないよ。食われるのも前提で作ってるからね、このくらいはね。……ちょっと驚いたけど」


「しくしく」


「ありがとー、ほら行くよロリコンおにーさん」


「うしっ。帰るか」


 俺はキリっ、と立ち上がり、ジト目を向けてくる2人など無視してミノさんを叩く。はてさて、どうやって持ち帰るかこれ……。


「よければ送ろうか?」


「え、いいんですか?」


「ああ、それくらいわけないよ」


 そう言われ荷車にミノさんを縛り付けた俺達は、農婦さんの馬に引かれ街へと戻るのだった。

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