第15話  ( ゚∀ ゚)ハッ!


 やんややんやと言い合い数分後。


「おにーさん焼けたよぉ。……それ何作ってるの?」


「おー。これソース、教会の人がパンとか調味料とか色々くれたから」


「ふ〜ん」


 そこら辺に生えてる香草や木の実をブレンドし、肉に合いそうなソースを自作してみた。


 この異世界の味付けは簡素というか、化学調味料に育てられたと言っても過言ではない地球人にとっては、どうにも薄く感じてしまうのだ。


「ほれ出来た。これをパンと肉に塗って、貰ったベーコンと引っこ抜いた薬草を挟めば、完成!異世界ハンバーガーだ‼︎」


「ハンバーガー?」


「まぁ食ってみ。こっち来てから毎日毎日草ばっか食ってたからな。良い感じのソース出来たと思うよ」


「うん。……(はむ)――ッ」


 齧り付いた瞬間、ミュゥの目が見開かれ、動きを止める。

 何だ?毒でも入ってたか?可愛いな。


「っ(ごくん)おにーさん!」


「どうした!」


「これ凄いよ!美味しいよ!凄いよ!」


「マジか!(ガブっ)」


 あ、ほんとだまぁまぁ美味い。


 ふむふむ、薬草は〜まぁあってもなくても良いな。

 スパイシー系の香草や実を多く使ったのは良かったかもしれない。味にパンチが出てる。


 しかしやはり苦味や渋味が多い。木の実じゃダメだな。

 正直、これはハンバーガーと呼ぶに値しない。


 バクバクとがっついているミュゥを見ながら考える。


 こっちに来てから色々なレストランを外から覗き見たが、お世辞にも食文化が発展しているとは言い辛い。


 魔法で長期保存は出来るのだろうが、出される料理はいつかインターネットで見た中世ヨーロッパよりちょっと贅沢といったその程度だ。


 モンスターという脅威がある分、戦闘面以外の他文化の発展も遅れていると見える。

 異世界博士の俺はそう読んだ。


「……(はむっ)」


 主食はオートミールっぽい何か。

 肉料理の大半は焼いたり、ローストしたり、煮たり。

 ハムやソーセージといった加工食品も見た。


 だが俺は、異世界に来てまだ1度も見ていないのだ。



 ……ミンチ肉を。



「……ククっ」


 これは、いけるかもしれない。俺の口角が新たなる野望に歪む。


「ミュゥ、始まるぞ。俺の知識チートが」


「ん?ん!(モッチャモッチャ)」


 俺は自分の空の掌を見て、リスの様に頬を膨らませたミュゥを見る。


「……ミュゥ、俺のハンバーガーどこだ?」


「……(ゴクン)うん!ぁぅ」


 逃げようとするミュゥのツノを引っ掴み、青筋をビキビキと浮かべ笑う。

 ニッコリと。


「ミュゥ、俺のハンバーガーは、どこだ?」



「……てへっ♡」



 ブチっ


「てへ♡じゃねぇよなぁ⁉︎朝から何も食ってないんだよこっちは‼︎出せ‼︎出せやこら‼︎」


「ちょっ⁉︎ツノ掴まないで⁉︎ねぇおにーさん⁉︎謝る謝るあうあうあうあう⁉︎」


「大人をナメやがってメスガキがぁ‼︎大人は怖いんだぞ‼︎怖いんだぞ大人はゲヘヘヘヘっ‼︎」


「っ目が、目が怖いよおにーさん⁉︎」


「分からせ執行ォオ‼︎」


「ピャァアアアああ⁉︎」

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