ガチャ139回目:第一層レアモンスター殲滅戦

 『ホブゴブリン』が予定していた通り行き止まりの空間から現れ、雄たけびを上げる。


『グオオオオッ!!』

「アヤネー、カメラは?」

「ばっちりですわ!」


*****

名前:ホブゴブリン

レベル:10

腕力:120

器用:100

頑丈:130

俊敏:80

魔力:300

知力:20

運:なし


装備:鋼鉄の大剣

スキル:怪力

ドロップ:鋼鉄の大剣

魔石:中

*****


「うーん、ステータスを見るのは初めてだけど、やっぱ弱いな」

『ガァッ!』


『ガキィン!』


 俺の言葉に反応したのか、『ホブゴブリン』は怒りの篭った形相で俺を睨み、『鋼鉄の大剣』を振り下ろす。しかし、所詮はレベル10程度のレアモンスター。『怪力』があったとしても『ミスリルソード』一本で難なく受け止める事が出来た。こいつに『二刀流』は使うまでもないな。

 数日前にも戦ったが、あの時よりも更に弱く感じる。まあ実際、俺が強くなってるんだけど……。


 力を込めずとも片手で圧倒してしまえているので、空いた手でトランシーバーを起動した。


「もしもし、こちらダーリン」

『グオオ!!』

『ちょ、ちょっとショウタ君!? モンスターの声が間近に聞こえるんだけど!!』

「いや、ちょっとビデオの件で聞き忘れた事があってさー」

『今それ聞く!?』

「動きを画面に収めるって話だったけど、どれくらい映せば良いのかなって」


 いつもなら一撃で撃破してしまえばいいが、動画に撮るとなると動きの参考になる資料としても使われる。それを思うと出オチさせるのはなんだか違うように感じたので、聞いてみようと思ったのだ。

 まあ、このタイミングである必要は欠片も無い訳だが。


『……はぁ、ショウタさん。とりあえず短くとも、2分から3分程度でお願いします。出来ればスキルの使用が判別できる何かがあると、より分かりやすいかと』

「了解ー」


 チラリと『ホブゴブリン』を見ると、どうやら最初に使った『怪力』の効果は既に切れ、肩で息をしていた。ただの『怪力』は、効果時間がたったの1分しかないもんな。

 もうここまで疲れ切っている様なら、動画に収める価値もないだろう。


 俺はトランシーバーを懐に戻して、その手を上げる。すると背後からファイアーボールと短剣が飛び出し、『ホブゴブリン』の身体を傷つけた。

 それを見届けた俺は、懐に飛び込んで首を落とす。


「レベルアップはなし、と」

「お疲れさまでした、ご主人様」

「動画としてはこんなもんでいいのかな?」

「良いと思いますわ」

「問題ないかと」

「それじゃ、レアⅡを待つか」


 待つこと数分。煙が集まり、そこからは見慣れたモンスターが現れた。


『ゲギャ?』


*****

名前:ジェネラルゴブリン

レベル:20

腕力:200

器用:180

頑丈:210

俊敏:140

魔力:250

知力:80

運:なし


装備:魔鉄の長剣、魔鉄の全身鎧

スキル:怪力、統率

ドロップ:ランダムな魔鉄装備

魔石:大

*****


「うーん、弱い」

『ギャギャッ!』


 今までの『ジェネラルゴブリン』の例に漏れず、こいつはカメラ役のアヤネに真っ直ぐ突っ込もうとした。その挙動は把握していたし、何よりもスピードが致命的に低い。

 初見は騙せても、見慣れた俺には通用しなかった。


「おらっ!」

『グギャッ!?』


 隙だらけの腹に蹴りを入れて、行き止まりの壁まで蹴とばす。

 少し加減をしたつもりだったが、それだけでコイツは肩で息をするくらい疲れ果てていた。一応、敵対心は完全にこちらに向かせることに成功したが、これ以上動画を撮る意味は、果たしてあるだろうか?


「ご主人様、一応撮りましょう」

「……了解」


 背を向けてるはずなのに、それでも心を読まれてしまった。うちのメイドは察しが良すぎる。

 そうして、数分ほど適当に相手をしてから、『ホブゴブリン』と同様に首を落とした。


【レベルアップ】

【レベルが40から41に上昇しました】


「よし、こんなもんだろ」

「はい、お疲れさまでした」

「録画もバッチリですわ!」

「この調子でどんどん行こうか」


 第一層に存在している行き止まりは全部で3カ所。

 左手前、左奥、右奥だ。残りの二箇所でも同じように『ホブゴブリン』と『ジェネラルゴブリン』を討伐し、レベルも42に上昇した。


 そして3カ所目の右奥で、その場でもう1度100匹討伐を達成し……。


『グオオオッ!!』


*****

名前:ホブゴブリン

レベル:20

腕力:180

器用:150

頑丈:195

俊敏:120

魔力:450

知力:30

運:なし


装備:鋼鉄の大剣

スキル:怪力Ⅱ、限界突破

ドロップ:鋼鉄の大剣、ホブゴブリンのトロフィー

魔石:大

*****


「うん、喧しさが2割増し。何の脅威もないな」

「そのようです」

「強化体の動画は、要らないのでしたわね?」

「いや、公開はしないけど支部長には報告する義務があると思うから、一応お願い」

「はいですわ!」


 今までと同様、適当にあしらいつつ力量を測り、2人に攻撃させてからとどめを刺した。


【ホブゴブリンのトロフィーを獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが42から43に上昇しました】


「さて、トロフィーは……と」


*****

トロフィー:ホブゴブリン、ホブゴブリン

管理者の鍵:810(1)、810(2(1/2))

*****


「どうなるかと思ったけど、完全別扱い、と。まあ、他のダンジョンにも『ホブゴブリン』のレアモンスターがいるだろうし、そりゃそうだよな」

「では、各地のダンジョンで『ホブゴブリン』のトロフィーを獲得すると、ずらーっと並ぶのでしょうか?」

「並ぶんじゃないかな? まあ、そんな事に使わずさっさと箱と鍵を探したいところだな」

「そうですわね! 早速探しに行きますの?」

「……いや、折角の機会だからレアⅡの強化体も出るか確認したい。このままここでもう100匹倒すぞ」

「はいですわ!」

「承知しました」


 そうして再び狩りを開始し、『ホブゴブリン』を倒したが……。続いて出てきたのは普通のレアⅡ『ジェネラルゴブリン』だった。

 やはり、レアⅡには強化体は存在しないらしい。ちょっと残念だ。

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