ガチャ137回目:久々の支部長

 食事のあと、『黄金の種』合計47個、『黄金の種(大)』16個をそれぞれ、丁寧に植木鉢に植えていき、いつもの様に『水魔法』で栄養を与える。

 数が数なのと、『黄金の種(大)』は大きく成長する事から、天井の高いリビングに置くことにした。


 あとついでに、『人面魚人』から得た謎の『魚人の種』も、一緒に植えておくことにした。危険な香りはしないが、何が出て来るやらわからない為これだけは自室に置いておくことにした。黄金シリーズより更にレアなのか、1個しかドロップしなかったけど……。何が出るんだろうか。

 ちなみに与える水だが、一応海で取れたわけなので、丁度良い塩分濃度になるよう塩も加えておくことにした。なんとなく、そうした方が良い気がしたのだ。


 そして夜。

 いつも以上にそわそわとしたアヤネに疑問を感じつつも、一緒に横になりながらお喋りをする。普段皆が居るところでは聞けない色んなことを彼女は語ってくれたが、その内彼女はウトウトとし始め、そのまま寝落ちしてしまった。

 幸せそうに眠る彼女を愛おしく想いながら、抱き枕にして夜を過ごした。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌朝。

 先に目を覚ましたので部屋を見渡すと、目の前には愛らしい寝顔のアヤネ。そして『魚人の種』は、未だ芽は出ていないようだった。まだまだ時間がかかるだろうな。

 優しくさすって彼女を起こすと、可愛らしい欠伸をしてしばらくぼーっとした後、何かを思い出したかのように布団に顔を埋めた。


「さ、先に眠ってしまいましたわー!!」


 何を言ってるのか聞き取れなかったが、よほどショックな事があったのだろう。呼びかけようとも一向に起き上がる気配がない。

 よくわからないが、そんなアヤネも可愛かったので、とりあえず撫でておくことにした。


「うぅ~!」


 けれど珍しく、しばらくそうしていてもアヤネは意気消沈したまま動かなかった。いつもならすぐに尻尾を振って甘えて来るのに。どうしたものかと、その様子をマキに相談したら、何かを察したような顔をして任せてほしいというので、お願いすることにした。

 女の子の悩みは、同じ女の子にしか分からないよな。


 しばらく経つと、元気になったアヤネが飛びついてきた。うん、回復したようで良かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 予定時間の30分前。俺達は、ダンジョン協会第525支部の、支部長室にお邪魔していた。


「アマチ君、よく来たわね。待っていたわよ」

「数日ぶりです支部長」

「ヨウコちゃんから聞いたわ。あなた、レアモンスターの情報を公開するそうね、動画付きで」

「はい。やってみたかったんですけど、ご迷惑でした?」

「いいえ、そんな事は無いわ。むしろこちらからお願いしたいくらいよ。今までレアモンスターを確実に沸かせられる人なんていなかったから、協会で開示している情報も、冒険者達から寄せられた情報を統合して、欠けたピースを繋ぎ合わせるようにして作って来たデータばかりなの。それがもし、完璧な映像データと共に、相手の動きや得意とする得物、ステータスからドロップまで。その全てが網羅できるとしたら、不意の事故はぐっと減るわ」


 良かった、支部長に怒られないで済みそうだ。


「アマチ君、これはあなたがやりたいことであるのと同時に、マキの為ね? ありがとう、娘の事を思ってくれて」

「い、いえ……。俺に出来る事をやろうと思っただけです」


 この人には俺の本音がモロバレしているらしい。誰にも言わなかったのに、恥ずかしいな。

 ちらりと隣を見ると、マキは嬉しそうに微笑み、アキはニヤニヤしてる。アヤネは目を輝かせてるし、アイラはいつものスマイル仮面だ。


「あれ、もしかして……」

「はい。ショウタさんの気持ち、とっても嬉しいです」

「ふふっ。だってショウタ君わかりやすいもの」

「旦那様の考え、素晴らしいですわ! 撮影はお任せ下さいまし!」

「これからは、撮影用に定点カメラもご用意するべきでしょうか」

「皆……」


 なんだ、バレてたのか。

 アヤネは違うかもしれないけど。

 あと、アイラは……。うん、まあいいか。


「私の想像以上に仲が良いわね。結構よ。この調子なら、サクヤのパーティーに参加しても問題はないでしょうね」

「あ、支部長。俺のステータスですけど」

「言わなくて良いわよ? 娘たちが信頼してるんですもの。あの時みたいに詮索はしないわ。あなたの好きにやってご覧なさい」


 そう言われると、余計に好きにやらせてもらうけど。

 チラリと彼女達に視線を送ると、優しく微笑んでくれた。


「『統率』込みで全ステータス2000越えてます」

「……」


 支部長は、空いた口が塞がらないと言った様子だった。それは短時間で急成長したことへの驚きからか、それとも単なる呆れからか。


 多分両方だな。

 だって、その後無闇矢鱈と情報を垂れ流すなとお叱りを受けたからだ。


 一応この場には俺の恋人達を除けば支部長しかおらず、珍しくハナさんは同席していなかった。いつも気が付いたら近くにいるという、アイラ並みの隠密っぷりを発揮する彼女は、本当に近くにはいないようで、今日の作戦の指揮を執るため一足先にダンジョン入り口で通行規制をしてくれているらしかった。

 そういう点も踏まえて、支部長しかいないから伝えたと言うと、溜め息で返事をされた。


「あなた達、ちゃんと彼の手綱は握っていなさいよ?」

「大丈夫よー。彼、勘は鋭いから滅多な事はしないわ」

「それでもよ。あまりに無防備過ぎるわ」

「お母さん、本当に危ない時はちゃんと注意してるから。ね?」

「信頼ないなぁ……」

「あのねアマチ君。それならどうして、私にステータスを開示したのかしら? そんな高いステータスを開示して、外に漏れたら色んな所から目をつけられるわ。何を考えてそれを伝えてきたの?」

「まぁ……いくつかありますけど。まずは心配させない為ですね。これくらいのステータスがあれば、そんじょそこらのモンスターには後れを取らないと思います」

「でしょうね。今のアマチ君になら、『中級ダンジョン』の深層でも、安心して送り出せるわ。もしかして、マキが心配性だから、私もそうだと思ったの?」


 それは、まぁ……。

 一応未来のお義母さん……だし?


 黙っていると、支部長はまたしてもため息を吐いた。


「……仕方のない子ね。で、他の理由は?」

「あ、はい。あとは、この先色々とやらかす予定なので、その時が来た時に納得してもらう為……ですかね」

「アマチ君、あなた……。何をするつもりなの?」

「今俺が考えている事が実現するかどうかは、俺自身予測がつかないというか、希望的観測が含まれてるのでなんとも。なので、まだ内緒です。ただ、上手くいけば、あっと驚くことになると思いますよ」


 今のレベルガチャの傾向からして、次に出てくるスキルというのも何となく分かってきた気がするんだ。だから、俺の予想通りなら……。それに例のトロフィーや鍵の件もあるし、俺がイレギュラーな奴だって改めて認識してもらっておかないと。

 ああ、次以降のガチャが楽しみだな。

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