その後の【小話】

【はじめてのエックス 上】

※都合によりカットしているシーンがあります。不自然な繋ぎ等、ご容赦ください※

※詳細は「──あとがき」をご覧ください※



「俺……今から、康太に……全部見せるから。恥ずかしいけど、見てほしい……へ、変だったら……ごめんね」


震える手で、瞬が寝間着のシャツの裾を握る。俺は、そんな瞬の手を包むように、自分の手を重ねて言った。


「……瞬の全部が好きだから」


「うん……」


頷いて見せると、瞬の瞳が揺れる。それから、ふう、と息を吐くと、瞬はゆっくり、シャツの裾をたくし上げていった。


俺は息を呑んだ。俺の下で……瞬が、肌を見せようとしている。誰にも打ち明けてこなかった怖さを、それでも、俺とならこの先を……と、瞬は乗り越えようとしてくれているのだ。


──初めての……瞬の裸。


きっと、恥ずかしくて堪らないんだろう。瞬は目を潤ませ、吐く息を詰まらせながら、シャツを捲り上げていく。そんな瞬に呼応するように俺の心拍も上がって、いけないものを見ようとしているような気になってくる。だけど、俺は目を逸らさなかった。


それが、俺の瞬への誠意。一緒に乗り越えて先に進もうという覚悟──。


……なんかじゃない。


「瞬」


「こ、康太……?」


シャツを捲る手を止めて、瞬が俺を見つめる。恥じらいと躊躇いで潤む瞳。


その中の躊躇いを払うために、俺は瞬に言った。


「俺は……瞬の裸が……っ、死ぬほど見たい……!」


「し、死ぬほど……!?」


瞬が驚きのあまり、身体をぴくりと跳ねさせる。畳みかけるように、俺は続けた。


「呆れるくらい見たかったんだよ……瞬の裸を……ほくろの数まで数えたいくらいに……ずっと……」


「え?え……?そ、そんな……」


瞬が俺から視線を逸らす。シャツを握る手に力が入った。


──そうだ。これは、もう俺の欲求なんだ……。


俺はもう一度、瞬の手を握って、言った。


「見たい」


ややあってから、瞬は俺をちらりと見た。

それから、ほんの小さく顎を引いて頷いた。


「……うん」


その瞳に、もう迷いはなかった。すると、今度は俺の方が驚くほど──瞬は一気に、シャツをたくし上げた。


──へその上まで。


「う、うぅ……」


それでもずいぶん、勇気がいることだったんだろう。恥ずかしさのあまり、ぎゅっと目を瞑る瞬の頭を撫でながら、俺は、露になった、瞬の腹を眺める。


「……綺麗だな」


俺は、思わず呟いた。プールや風呂で野郎の裸を見たことはいくらでもあるが、こんな感想を抱いたのは初めてだ。


それも、もう十年以上も一緒にいる幼馴染に、こんな気持ちになるなんて……少し前まで考えもしなかった。


瞬の肌は白くて、触れなくても滑らかでハリがあると分かる。それなのに、気が付くと、俺は瞬の腹に手を伸ばしていた……が、すんでのところで思いとどまる。


俺は逸る気持ちを抑えて、「瞬」と声を掛けた。瞬がそっと目を開けて、それに応える。


「……う、うん」


「触っても……いいか?」


瞬の腹にぐっと力が入った。触られると意識して、緊張したんだろう。それでも、瞬は俺を見つめ、こくりと頷いて言った。


「さ、触って……」


「……っ」


俺は唾を飲んでから、慎重に手を伸ばして、瞬の腹に触れる。


「……っ、ぅ」


瞬間、瞬が短く息を漏らす。ぴく、と身を震わせた瞬の様子を窺いながら、俺はゆっくりと、瞬の腹を撫でた。


「っ、ふ……ぅ……はぁ……っ」


まずは、へその周りで弧を描くように触れる。

瞬の肌は指の腹に吸い付くみたいにすべすべで、呼吸に合わせて上下する腹は温かい。

はじめはゆっくりと撫でていたが、気が付くと、手のひらで感触を楽しむように撫で回してしまう。


そういえば、あんなにたくさん食べるのに、瞬の腹はちっとも出ていないし、腰回りの肉も全然付いてない。一体、どこに消えてるんだ……と、俺はつい、下っ腹のあたりを探るように撫でた。すると、瞬が悩ましい声を上げて、身をよじる。


「あ……っ、ん、ふ……ぅっ、はぁ……っ、ん」


「っ、瞬……」


「ん、っ、はぁ……んっ、ふぅ……っ」


自分でも妙な声を出している自覚があるのか、瞬は手のひらを口に当てがって、声を押し殺そうとしていた。俺は、腹を撫でる手を止めて、瞬に訊く。


「腹……気持ちいいのか……?」


「ん……」


目にうっすら涙を溜めて、瞬が小さく頷く。正直、ぞくりとした。

俺は再び、腹周りをゆっくりと撫でながら、瞬に訊いた。


「腹、撫でられると、気持ちいいって……知ってたのか?」


「っ、ん……し、知って、た……っ、ぁ」


「何で……?」


「んっ……お、お腹に……印を、付けられちゃった後、ん……っ、く、癖に、なっちゃった……みたいで……っ」


──【呪い】のことか。


せかいちゃんが【ボーナス】だとか言って、瞬の腹に刻みやがった、あの「淫紋」とかいうやつ。【呪い】自体は消えたはずだが、瞬の身体はまだ、その時のことを覚えてしまっているらしい。


「だったら、あんまり触らない方がいいか……?」


俺は手を止めて、瞬に尋ねる。すると、瞬はゆるゆると首を振って言った。


「さ、触って、ほしい……その……」


そこで言葉を切って、もじもじと身体を揺らすと、ややあってから、瞬は躊躇いがちに口を開いた。


「お、お腹……気持ちいいって気付いてから、と、時々……自分でも、触っちゃってた、から……康太のこと、考えながら……」


「お、俺を……?そ、それって……」


真っ赤な顔で恥ずかしそうに俯く瞬に、俺はごくりと喉を鳴らした。

自分の身体の気持ちいいところを触りながら、俺のことを考えてたなんて、それはもう──。


「オナってた……ってこと?」


「……う、ぅ」


羞恥でいっぱいのうるうるの目で「言わないでよ」とばかりに俺を睨む瞬。だけど、すぐに観念したように頷いた。


たまらなくなった俺は、また腹を擦ってやりながら、瞬に訊く。


「いつも……どういう風に触ってたんだ?腹……」


「ふっ、ぁ……ど、どうって……ん、そんなの……」


「こんな感じ……?」


俺は、さっき触ってて特に反応が良かった下っ腹のあたりを、ぐるぐると撫でてやった。すると、瞬が息を詰まらせながら、ぴくぴくと背中を反らす。


「っ、はぁ……ん、ぅ……」


呼吸を荒らげて、俺を見上げる瞬の目は、その通りだと言っているようなもんだった。


調子に乗った俺は、今度は、手のひらを滑らせて、瞬の腹全体を少し押すようにしながら撫でる。声を堪えながらも、俺に身を委ねる瞬の顔は、明らかに興奮していた。


俺は、部屋で一人こっそり、自分の腹を撫でながら、俺のことを考えて、こんな風になっている瞬を想像した。二人でいてもそんな素振りは全くなかったのに、一人になった途端、密かにこんなことに耽っていたのだ。ふうん……。


俺はぺちぺちと瞬の腹を叩きながら、言った。


「瞬って、結構……ムッツリだったんだな。こんなエロいこと、一人でしてるなんて……」


「……う」


……マズい、ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。


瞬が眉を寄せて泣きそうな顔になった。

俺は慌てて、瞬をフォローする。


「でも……俺は、嬉しいぞ。瞬が、エロい奴で……もちろん、エロくなくても好きだけど……エロい瞬も好きだ。瞬がエロいことになってるのを、俺は見たいし、瞬にエロいことをしたいとも思ってるし、エロいことをされてもいいし、俺は瞬をすごくエロいと思ってる……!」


「そ、そんなに、エロいって言わないでよ……!」


瞬は頬を膨らませて、シャツを掴んでない方の手で、ぽこ、と俺を叩く。でも、俺が「ごめん」と謝ると、瞬は困ったような顔で「いいよ」と言った。


それから、俺の反応を窺うように、こんなことを訊いてきた。


「……お、俺が、変でも、康太は、好きでいてくれる……?」


「好きだ」


「ほ、本当に……?」


「最初に言っただろ。瞬の全部が好きって」


そこまで言って、俺は、瞬のシャツを掴む手が、また震えていることに気付く。


瞬は俺に、まだ見せてないところを晒そうとしてくれてる。そして、そこはきっと……瞬にとって、誰にでも見せられるようなところじゃない。


――それでも、前に進もうとしてる。


俺は、瞬の目尻を親指で拭ってやってから、頭を撫でて言った。


「ゆっくりでいいから、俺に……見せてくれるか?さっきも言ったけど、俺は……瞬の裸を見たいと思ってる。隅々まで、全部」


俺の言葉に……瞬は頷いた。


そして、瞬は意を決して……シャツをぐっと胸の上まで捲った。白い腹から流れるように、視線を遣ると、そこには……。


「っ、瞬……」


「……っ、ぅ」


──薄く肉のついた、なだらかな白い胸板に、薄桃色の乳首が露になっていた。


初めて見る瞬の乳首は、俺に新鮮な衝撃を与えた。


色も形も、俺と同じ男とは思えないほど、瞬の乳首は可愛らしいものだった。たぶん、これは世界一可愛い乳首だ。俺はつい、瞬の乳首をまじまじと見つめる。よく見ると、左乳首のそばには、小さなほくろが一つあった。ますます可愛い乳首だ。これの一体どこが変なんだろう。


「なあ、瞬──」


「お、俺の……変、だよね……」


だけど、俺の言葉を遮るように、瞬はそう言う。

不安でたまらないという顔で、俺を見つめる瞬に、俺は首を振って言った。


「瞬の乳首は変じゃない」


「で、でも……」


瞬は俺の視線から逃げるように、手で乳首をさっと隠して言った。


「お、俺の……色も、薄くて、ピンクで……乳輪も、ちょっと大きくて、男のくせに、気持ち悪いし、変って……」


「……っ」


今にも泣きそうな顔で言う瞬に……俺は、ふっと息を吐いて、胸の中に湧いた怒りを逃がす。


かつて、瞬にそんなことを言ったらしい野郎を、俺は一生許すつもりはない……それから、瞬の苦しみに気付かなかった自分自身も。


でも大事なのは、これからだ。


これから──俺は、瞬が嫌になってしまったところも全部、俺が瞬を愛するのだ。


俺は、乳首を覆う瞬の手を掴んで、そっと剥がす。すると、瞬が眉をへの字にして「康太……!」と慌てるので、俺は掴んだ手を握り、瞬を見据えて言った。


「瞬……俺は、瞬の乳首を変だと思わない。本当だ。瞬の乳首は、可愛い」


「か、可愛い……?」


「ああ」


戸惑う瞬に見せてやろうと、俺は穿いていたスウェットをずり下げて、パンイチになった。


――そこには、パンツをぐっと押し上げる「奴」がいる。


瞬は短く「ひゃっ」と声を上げて、俺を見上げた。


「こ、康太……」


「分かるか……?瞬。俺は……瞬の乳首を見て、こんなに……興奮してる。瞬の乳首が可愛いから、こうなったんだ……」


「う……そ、そうなの……?」


ぱちくりと瞬きをしながら、「奴」と俺を交互に見る瞬。俺は、掴んでいる瞬の手を「奴」のところまで導いて、パンツ越しに「奴」に触れさせた。


熱く芯を持って硬くなった「奴」に、瞬は身体をぴくりと反応させて驚くと、上目遣いに俺を見つめて「こ、康太」と言った。


「ほ、本当に……俺の、乳首で……こ、こんなになっちゃった、の……?」


俺は弾みそうになる息を抑えながら、「ああ」と頷いて言った。


「……っ、好きな奴の……瞬の可愛い乳首を見たら、エロい気持ちにだってなるだろ……本当なんだ。だから……もっと、瞬の乳首を見せてほしいし、触りたい……」


「康太……」


そう呟いて、瞬がきゅっと口を結ぶ。

その様子に何かを感じて、掴んでいた瞬の手を離してやると、瞬はもう一度、寝間着のシャツに手を掛けた。そして──。


「ん……」


「瞬……っ」


瞬は腕を上げて、自ら、シャツを全部脱いで見せた。


──俺は釘付けになった。


俺の下で、瞬の白い上半身が全て露になったのだ。浮き出た鎖骨も、毛の薄いつるっとした腋も全部……。


それでもまだ恥ずかしいのか、もじもじしながら、反応を窺う瞬に、俺の興奮はますます煽られた。


跳ねるどころか、暴れそうになる心臓を抑えながら、俺は瞬を見つめる。


「……瞬」


すると、瞬はこくりと頷いて言った。


「こ、こっちも、触って……?」


「……っ」


俺はたまらず、瞬の乳首に手を伸ばした。


外気に晒された乳首が、緊張で震える瞬の胸の上で、ぷくりと勃起している。触れなくても、硬くなってると分かるくらい、瞬の乳首は充血して張り詰めていた。


「押してはいけないスイッチ」を好奇心に負けて押すみたいに……俺は、おそるおそる、瞬の左乳首を人差し指で、ちょんと突いてみた。すると──。


「ひ、ぁっ……ん?!」


腹に触れたときよりも、瞬の身体がびくりと跳ねる。思わず、手を引っ込めそうになるが、瞬は首をふるふるして「大丈夫」と言った。


「び、びっくりしちゃっただけ……でも、大丈夫、だから……康太の、好きなように、して……」


「ああ……」


緊張と興奮で渇く喉を、唾で無理やり潤してから、俺はもう一度、指先で瞬の乳首を突いた。今度は右の乳首だ。瞬は手のひらで口を抑えて声を耐えていたが、身体の方はどうしようもない。びくびくと背中を浮かして、瞬は感じていた。


──嫌がって、ないよな……?


瞬の様子を窺いつつ、俺は指先で右の乳首をくにくにと転がしてみる。すると、瞬はぐっと手のひらを口に押し付け、くぐもった声を漏らして、身をよじった。


「んぅ……っ?!はぁ……っ、ぁ、んっ、ふぅ……んんっ……はぁ……」


その動きはまるで、俺の指に、瞬が自分から乳首を擦りつけてるみたいに見えて、ぞくぞくした。いや、たぶんそうだ。声を堪えて悶える瞬の目には、いつの間にか、期待の色が滲み始めている。


真面目でしっかり者で、そういう話も苦手で、今までほとんどしてこなかった幼馴染の恋人に、こんな一面があったなんて……。


──もっと、瞬のエロいところが見たい……。


俺はもう片方の手で左の乳首も転がしながら、瞬に訊いた。


「乳首も……そんなに、気持ちいいのか?」


「んぅっ、ん……」


身体を震わせながら、こくこくと瞬が頷く。未知の感覚だな……好奇心を掻き立てられた俺は、両方の乳首の先を少し引っ張りながら、さらに訊く。


「右と左、どっちが気持ちいい……?」


「っ、ひ、ぁ……ん、わ、わかんな……っ、ぁ、んぅ……」


「こっち?」


俺は右の乳首の先を親指と人差し指で軽く摘まんでみた。瞬は息を詰まらせながらも首を振る。

今度は、左の乳首をきゅっと摘まんでみた。瞬はふうふう、と息を漏らしながら、首を振って言った。


「ん、ど、どっちも……ぉ」


「ふうん……」


それならと、俺は両方の乳首の先をふにふにと弄った。


刺激に慣れてきたのか、瞬はとろんとした目で、好き放題に弄ばれてる自分の乳首をじっと見つめている。身体の方も、びくびくと跳ねるというよりは、快感の波に乗って揺れているみたいだ。


俺は、瞬に見せつけるように、乳首を引っ張りながら訊いた。


「こっちは……いつもは、自分で触ったりする、のか……?」


瞬は首を振り、熱い息を漏らしながら、切れ切れに言った。


「ん、ふ……っ、さわら、ない……っ、お、おっきく、なっちゃうから……」


「大きく……?」


俺が繰り返すと、瞬が俯いて小さく頷く。


──大きく……それって……。


俺は、ちらりと、瞬の下半身に視線を遣った。寝間着のズボンを控えめに押し上げる瞬の……「瞬」。


俺は、片手をそっちへと伸ばして、ズボン越しに「瞬」に触れた。すると、瞬が「ま、待って」と声を上げるので、俺は「瞬」の先っぽあたりを手のひらで撫でながら、言った。


「乳首を触ると……すぐに、ここが勃って辛いから、いつもはしないのか……?」


「ん……っ、ぁ、ち、ちが……っ、そうじゃ、なくて……」


そう言って首を振ってはいるが、もどかしいのか、瞬は太腿を擦り合わせている。もしかして、チンコを触られることに対して、遠慮してるのかもしれない……俺も、瞬に抜いてもらう時、ちょっと戸惑いがあったもんな。


俺は、瞬を安心させるために、こう言った。


「……瞬。前に、瞬が俺にしてくれたみたいに、俺も瞬を気持ちよくしてやりたいんだ……だから、『瞬』を任せてほしい。遠慮なんかしなくていいんだ……」


瞬が困ったような顔で「うぅ」と唸る。

それでもまだ「そうじゃないんだけど……」とか、もにょもにょ言っていたが、やがて、瞬は「分かった」と頷いた。


「……俺も、康太に……して、ほしい。でも、その代わり……」


「その代わり……?」


俺が首を傾げると、瞬は俺の股間に手を伸ばしてくる。そして、パンツの上から「俺」を撫でて言った。


「俺にも、また……康太のこと、気持ちよくさせて……」


「瞬……それって」


──お互いに、抜き合うってこと……だよな。


瞬が小さく首を縦に振る。俺も「ああ」と頷いて言った。


「じゃあ……一緒にするか……」


「うん……」


息を荒らげたまま、俺と瞬は見つめ合う。


そうと決まれば、だ。


俺は、瞬に目で合図すると、ズボンをゆっくり下ろした。瞬もそろそろと俺のパンツに手を掛けて、下ろしていく。硬く張り詰めた「俺」が露出すると、瞬が唾を飲んだのが分かった。一方で俺は……。


「こ、康太……?」


ズボンを下ろしたところで手を止めた俺を、瞬が「どうしたの?」と見つめる。


俺はごくりと唾を飲んでから、瞬に言った。


「いや……パンイチの瞬……初めて見たから……」


「へ……?あ、え、えっと……」


言われて初めて意識したのか、瞬が慌てて、手でパンツを隠す。だけど、それくらいで隠せるはずもなく……しかも今更だ。

今の瞬は、上も下も脱いだ、真正パンイチなのだ。俺は瞬の手をそっと退かして、改めて、じっと瞬のパンツを観察する。


「へえ……今日は、黒地に白のドット柄なんだな……」


「う……も、もう、あんまり見ないで……」


「瞬って柄物のパンツ多いよな……可愛いと思うけど……自分で買うのか?」


「……変態」


瞬は頬を膨らませて、そっぽを向いてしまった。


これも今更だと思うんだが……俺は「悪かったって」と瞬の頬をぺちぺちと叩く。


そして、瞬がちらりと俺を見遣って「いいよ」と言ったところで、少し名残惜しいが……俺は瞬のパンツに手を掛けて、ゆっくりと下ろしていった。


「ん……」


息を詰めた瞬が、俺にされるがまま、パンツを脱がされていく。


細くて白い脚を通してパンツを抜き取り、その辺に投げると、これで、瞬は一糸纏わぬ全裸になった……。


「へ、変……?」


俺の視線に不安を感じたのか、瞬がおずおずと俺に訊いてくる。俺は首を振って、「瞬」をそっと優しく撫でながら言った。


「瞬は……どこをとっても、可愛いって思ってたんだ……俺は、瞬の『瞬』も好きだ……」


「っ、ん……はぁ……あ、そ、そっか……ん、よかっ、た……ぁ」


瞬が声を震わせながら、俺にそう返す。その表情からは悦びつつも、ほっとしてるというのが伝わってきた。







「はぁ……っ、はぁ……」


「あっ……ん、はぁ……」


目が眩むような快感の波が引いていくと、頭がぼうっとして思考が散漫になっていく。

呼吸を荒くして、くたっとベッドに伏せる瞬の隣に、俺も倒れ込んだ。すると、瞬がおもむろに俺の方を向く。


「康太……」


「瞬……」


視線が絡むと、磁石が引かれ合うように、俺達はくっついてキスをした。静かな部屋で、リップ音が響くのも構わず、気が済むまでお互いの唇を味わってから離すと、息を乱したまま、しばし見つめ合う。


掠れた声で俺は言った。


「手に……出しちまったな……」


ゆるゆると首を振った瞬が、同じように掠れた声で返す。


「いいよ……康太のなら……嬉しい……俺も、康太の手に……出しちゃった……」


「瞬のならいくらでも浴びれる……」


「……変態」


瞬がふっと笑って、俺を見つめる。


そんな瞬がたまらなく愛おしくなり、頭を撫でてやろう……と手を伸ばしかけて、俺は思い留まった。


いくら、俺はよくても……この状態の手で、髪に触られたくないだろう。それに、瞬の手だって、いつまでもそのままでいるわけにはいかない。


俺は半身を起こして、その辺に何か拭けそうなものがないか探す。ふと、ベッドの縁に何か布らしきものが引っかかっていることに気付き、掴み取った。


薄暗い部屋じゃ、どんな布かは分かんねえけど……まあ、いいか。俺はその布で自分の手を拭き、それから、瞬の手を取って、その布で指の間や手のひらを拭いてやった。すると──。


「こ、康太……」


「ん?何だよ、瞬。どうかしたか?」


「いや、えっと……その」


瞬が俺の手を見つめて固まっている。というか、俺の手に持った……布を見て固まっている?


俺は首を傾げて瞬に訊いた。


「この布が、何だ?」


「……俺のパンツだよ」


「……」


俺はおそるおそる、手に持った布をよく見る。


――べっとりと汚したその布は、ついさっき俺が脱がせた瞬のパンツだった。


「えー……」


ひとまず、瞬のパンツを丸めてその辺に置くと、俺は裸の瞬を抱き寄せて言った。


「続き、しようぜ……?」


「さ、最低……っ!?ん、ふ……ぁ……」


腕の中でじたばたする瞬の唇を強引に奪って、舌をねじ込む。


はじめは、舌で俺の舌を押し返して抵抗した瞬だが、歯列をなぞったり、上顎をくすぐったりすると、力が抜けて、俺の舌を受け入れてくれるようになった。……こうなったらもう、パンツのことは忘れてくれただろう。


しばらく、そうやって舌を絡め合ってキスをしていると、「俺」の方もまた芯を持ち始める。「瞬」も同じだった。


やがて瞬は、息を切らしながら、俺に囁いた。


「康太……」


「ん……?」


「俺も、康太ともっとしたい……」


「瞬……」


──それの意味するところは、もう分かってる。


俺は身体を起こすと、瞬に言った。


「……瞬、俺にケツを出してくれるか」


「……もっと言い方ないの?」


「俺にそんな語彙ねえよ……」


頭を掻いてそう言うと、瞬は「知ってる」とくすくす笑った。


それから、瞬は「ちょっと待って」と枕元から何かを取り出して、俺に見せてきた。


「これは……靴下、か?」


フェルト素材の、赤い、いかにもクリスマスって感じの靴下。人が履くにはデカすぎるそれは、おそらく。


――『あ、ちょっと待て康太!ほら、俺一応サンタだろ。だからお前にプレゼント持って来たんだよ!瞬ちゃんの部屋の枕元に、お前らへのプレゼント置いてきたから!見てくれよな。大丈夫だって、お前らが喜びそうなもん、ちゃんと選んできたから。ばっちりだぜ』


俺の思考を読んだように、瞬は「うん」と頷いて言った。


「起きたら、俺の枕元に、この靴下があって……その、中身が……」


「中身……」


俺は、瞬から靴下を受け取り、中に手を突っ込む。

触った感じ、何かのボトルと……細長い箱か?ひとまず、俺はそれらを取り出して見た――。



【『けつあなするならこれで確定な』お尻用ローション】


【『安心と信頼の○カモト製』0.01 】



『康太・瞬ちゃん


クリスマスには大事な【ス】が三つあるんだぜ?


サンタクロースと……


セ〇クス


それから【スキン】だ。


盛り上がっちまうかもしれねえけど、


そういうのはちゃんとしろよ。


by お父サンタ より』



「……」


「……」


ご丁寧にメッセージカードまで付いたそれらを手に、俺と瞬は顔を見合わせる。


――まあ正直、父親にクリスマスプレゼントで貰いたくはねえけど。


俺は、あの「お節介親父」に心の中で「ありがとう」と手を合わせてから、瞬に言った。


「……やるか」


「……だ、だから言い方!……あ」


改めて、瞬をベッドに押し倒す。


緊張と期待の入り混じる顔で俺を見つめる瞬を見下ろしながら、さて、まずは――と俺はローションのボトルを手に取った。


<【下】につづく>

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