受かったけど……

 先日、声優養成学校のオーディションにギリギリ合格した。


 てっきり不合格だと思っていたので連絡が来たときには非常に驚いた。


 正直に言うととてもうれしい。


 ただ……、授業料がかなり高い。


 就活に失敗してバイトもできていない現状ではどう考えても払いようがない。


 大学までの学費・生活費でかなりの額を払ってもらったのにこれ以上親に頼むわけにもいかない。


 文才か何かがあればどこかのコンクールで賞金を獲得できたのかもしれないが、ないものねだりをしても仕方がない。


 残念だが今回はあきらめるしかないだろう。


 今年中に就職して来年度も声優になる気があるのであればまた挑戦しよう。


 精神に不調をきたしていなければとっくの昔に百万は稼げていたと思うとメンタルの強さがどれだけ重要かを痛感してしまう。


 働きたいという思いはある。


 自由に使えるお金はあればあるほどいいし、使う目的もしっかりしたものがある。


 けれども、外の世界や他人への恐怖心がいつもそれを上回ってしまう。


 家族や知り合い以外の人と何年もまともにコミュニケーションをとらなかった弊害で、必要以上に警戒心を抱いてしまうようになったのだ。


 声優のオーディションに参加しようと思えたのは今でも不思議だ。


 あの行動力はどこから来たのだろう。


 就活ではハローワークの入り口に二回ほど近付くぐらいのことしかできなかったのに。


 明日はきちんと建物の中に入りたい。

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