第21話拮抗した勝負
ふっふっふ……。ようやく始まったこの勝負。さぁ、篠原三佳子さん。君の実力、見せてもらうよ!
サッサッサッサとディーラー役の彼が僕たちにカードを5枚配り、僕はそっと目を通す。ふむ、Aのワンペアか。ここはA以外を捨てて様子を見よう。
「3枚捨てるよ」
A以外の3枚を彼に渡すと、3枚のトランプを配ってくれる。どれどれ、中身を拝見……お! いいじゃん。マークの揃ってない5が2枚。Aと5のツーペア。悪くない手だ。でもいきなり勝負を仕掛けるのは悪手かもしれないし、とりあえず様子を見よう。
「篠原さんはそのままでいいの?」
ニマニマとポーカーフェイスを装いながら聞くと、彼女は無表情で。
「えぇ。このままで平気よ」
声のトーンを変えずに言い放つ。なるほど、表情を見て相手の手の内を探ることは難しそうだ。まあいいけど。ポーカーは単なる運ゲーじゃない。適切な時、適切な場面で大きく勝負に出る。
何回負けようと、最終的にチップを多くもぎ取った方が勝つんだ。
「そう、じゃあ僕はとりあえず、1枚ベッドしようかな〜」
パチンと自分の場に積んであるコインを1枚、参加費であるコインの上に乗せる。
まあ初戦だし、とりあえず様子見だ。
「さぁさぁどうする? 勝負する〜?」
にひひっと挑発気味に言うと、篠原さんは初めて笑みをこぼし。
「そうね。じゃあ”オールイン”で」
場に積んである9枚のコインタワーを前に出した。な、なんだって ––––––––––!? 初っ端から大胆にも全賭けなんて、普通の人間には到底出来ない所業だ。
そうか、相手はあの篠原三佳子。そんじゃそこらの凡俗と一緒にしてはいけない人間ってわけだね。この勝負どうする? あの自信に満ちた顔。いい手札なのか? それともブラフ?
まさかこの僕がこんなにも心を揺さぶられるとはね。正直僕の手は、悪くない。でも良いとも言い切れない。さすがにここで全てをかける度胸はないよ……。
「降りるよ」
パサーと手札を見せると、篠原さんも手札を見せてきた。2のスリーカード。危ない危ない。危うく負けるところだったよ。
僕は手元にある2枚のコインを篠原さんに差し出す。でもまあ、まだまだ勝負は始まったばかりだよ。今は負けたけど、最後に勝つのはこの僕だよ!
僕は新しく配られた5枚のカードを見て、勝利を確信する。5のフォーカード! これは勝ち確! あとはここからいかに相手に賭けさせるか。僕は先ほどと同じように、挑発気味にコインをベッドする。
「それじゃあ僕は2枚だけベッドしようかな〜」
さぁ乗ってこい! さっきみたいにオールインをするんだ! 僕は篠原さんの次のアクションを待つ。しかし篠原さんは、「はぁ」と軽くため息をつくと。
「降りるわ」
パサーとブタの手札を広げると、僕に1枚コインを渡してきた。く、くそ〜。よりによってブタだったのか。さっきみたいに中途半端に強い手札だったら、篠原さんも乗ってきたはずなのに……。
まあ良い。今ので流れは僕に傾いたはずだよ! 拮抗した勝負の中、僕は喜びの感情を味わっていた。
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