『葬送のフリーレン』初期設定読み解き
注意:1巻までのネタバレあり。それが嫌な方はブラウザ・バックをお願いします。
フェルンちゃん。火力出ねえ。といって、マンガでの話ではありません。モンストでの話です。でも、人気ですね。まだ実装して日がないのに、みんなのクリアモンスターに入っていることがしばしばあります。
そんな訳で、お題の話です。そう、マンガの方です。ただ、最初に言っておきますが、ここで、作品の評価しようという訳ではありません。それは、各々が自分で呼んですればよいことと想います。そもそも、まだ連載中ですしね。
ここで初期設定と言っているのは、作品を描くに当たり、なすことになるあれです。カクヨムさんで書いている方にはお馴染みですね。まあ、中には書きたいままに書いて、傑作を書けるという天才肌の方もいるでしょうけど。
閑話休題。本作は、原作者――いわゆるコミカライズにおける小説原作ではなく、最初からマンガ向けの原作ですね――がいることもあり、初期設定は十分に練ったと想われます。ここら辺は、連載マンガゆえの特殊事情も加味すれば、なおさら、うなずけることと想います。どんなに壮大な物語の構想があっても、人気が出なければ、下手すると10話程度で打ち切りの現実が待ち構えます。面白いマンガが始まったと喜んでいたら、えっ、打ち切りなのとがっかりした経験をした方も多いのではないでしょうか。
では、本題。まず、最初にあれっと想ったのは、『少年サンデー』連載なのですが、少女向けなのかな? というものでした。主人公のフリーレンも、最初の弟子のフェルンも女性です。脇役には、(物語の進行上必要な役回りだけでなく、)主人公に親しみを持てなかった読者が自らを投影できる役割も求められます。健気で成長途上で同世代のフェルンは、少女にとっては、とても感情移入しやすいキャラだと想います。
他方、フリーレンの方は中性的に描かれており、少年が自己投影するとしたら、こちらだろうとも想います。ただ、特徴的な横にとがった耳――それゆえ読者の目線を引く――には、しっかりイヤリングをつけ、また、顔もとてもきれいに描かれます。
なんとなくここら辺は『サンデー』の特殊事情もあるのかなと想います。『サンデー』の看板といえば、『名探偵コナン』であり、長らく諸作品を連載されている高橋留美子先生です。ともに少年・少女相半ばするファン層がいると想われ、それなら、少女向け作品の需要に応えてということもあるだろう、と想像します。
ただ、話はそれほど単純ではなく、実際のところは、少年・少女双方に向けてというところでしょう。というのは、本作、コミックス1巻中には恋愛要素は0で、むしろ、バトルが出て来ます。といって、第5話のみだったりしますけど。まあ、でも、強いフリーレンを印象づける当たり、押さえるべきところは押さえて、という構成とは想います。少年は強さに憧れますからね。
少女は美しさに憧れを抱く。ただ、現代では強くかつ美しくでしょうか? とすれば、フリーレンこそ、とむしろなるのかもしれませんね。少年向けのバトルマンガで、少女(もしくは女性)がともに戦うようになったのは、現代では珍しくありませんね。これらの存在は、少女がキャラに、そしてそれを通じて作品に感情移入しやすいように、多用されるようになりました。
ここで、ふと想い浮かぶのは、『呪術廻戦』の五条悟です。とすれば、少年もまた強く美しくに憧れるのかもしれませんね。
ただ、読者層として少女――例え、半分ではあっても――を想定したことは、この作品を決定づけているとさえ言えるかもしれません。
ところで、皆さん。少女マンガって、精神年齢、高くないって想ったこと、ありませんか? というか、身も蓋もない言い方をすると、大人向けの題材を遠慮会釈なくぶち込んで来るなということになりましょうか?
そう、ここで、本作のテーマについてです。これは、タイトルに冠された『葬送の』でほのめかされます。次に第1話において、勇者ヒンメルの死に際し、フリーレンはヒンメルのことを知ろうとしなかったと涙を流します。次に……と続けても良いのですが、あまりもったいつけても良くありませんね。それにネタばれのラッシュになりますし。そう、フリーレンが知らないのは、むしろ己の心の方なのです。己の心を知り、それを癒す、そう鎮魂こそが本作のテーマなのです。
第4話で明確にフェルンは16歳と言及されます。なので、同世代の中高生が想定読者層といえましょう。そんな若い層に鎮魂の物語が必要なのか? と想われるかもしれませんが。ただ、三つ子の魂百までと言うではありませんか。また、若いときこそ、大人向けの題材の作品を好んだという記憶はありませんか? そして、鎮魂の物語こそ最も大きなカタルシスをもたらすものではないでしょうか?
そして、その鎮魂の旅はいかなるものかと言えば、魔王城への旅――魔王征伐をなした勇者一行としての旅を振り返りつつと恐らくなるのでしょう――となります。ただ、現代の読者が現実体験として、魔王征伐をなした訳ではありません。これはゲーム体験なのです。ただ、それが読者の鎮魂において働く、読者の魂のいやしにつながるのです。これぞ、まさに現代と想いました。
本作には、振り返ったフリーレンと想わず目が合い、どきりとする仕掛けがあったりする。そんなフリーレンにあなたも会いに行ってみるのはいかが?
注意:あくまで1巻の終わり時点です。話が異なる方向に進んだら、まさに、それはそれです。本作はお題の如く『初期設定』についてですから。
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