書いている方と読んでいる方のずれ

ひとしずくの鯨

第1話 書いている方と読んでいる方のずれ

 冬、寒くなると、CDプレイヤーがご機嫌斜めになり、起動に時間がかかる。それもあって、ユーチューブの音楽をBGMにすることが多い。最近、よく聞いているのは、アイブリーという人の路上ライブ。歌声が素晴らしいのは、もちろんだが、歌う際の息を吸う音(ブレス)が切なさをかき立てる。


 録音技術に詳しくないので確かなことはいえないのだが、多くのミュージシャンのCDでは、このブレスの音はあまり聞こえず、意図的に消されているのではないかと想う。テレビの音楽番組でも生ライブなら――特にアコースティックのセットなら――ときどき、聞くことができる。つまり、そもそもの考え方として、このブレスが聞こえない方が良いとの考えが、作り手側にあるのだろう。なので、ユーチューブならではの聞こえる音といえる。


 マンガでも、(ときどき公開される)鉛筆の下書きの方が作者の感情が伝わって好きだったりする。この後、ペン入れしたり背景つけたりして仕上げられるのだが、この作業に膨大な手間がかかるのは知られていることである。


 最近、小説を書いていて想うことは、書いている方が良かれと想って書いていることのどこまでが、読者にとってそうなのか、ということである。つまり、余計な読者サービスになっていないか、ということである。と同時に大事なところを消していないかということである。

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