第09話 恋人



 レプトは、クォークが15歳になった日のことを思い出していた。



 この日は、半年ずっと考えていたことを実行すると決心し、クォークの部屋に入った。


「俺は、この時を待ってた」


「どうしたの? いきなり」


 レプトはクォークの頬に手を伸ばし、


「好きなんだ! 俺の恋人になってくれ!」


「えっ? えーーっ!」


「成人するのを待ってたんだ」


「イヤイヤ。急すぎ! ムリムリ」


 クォークは頬を上気させ、


「レプトのこと、そんなふうに考えたことない」


「俺も昔はそうだった。でも、この半年一緒に暮らして、女として好きになったんだ!」


 男に免疫のないクォークは目を泳がせながら、


「レプトはレプトだし。好きとか、そんなんじゃ……」


 レプトはクォークに顔を寄せ、


「俺のこと嫌いじゃないなら、試してみないか?」


 そっと、耳元で囁いた。


 耳に息を吹きかけられたクォークは、体の力が抜けてフニャフニャになった。


 それを見たレプトは、クォークを抱きかかえてベットに運び、抱きしめた。


「私、女らしくない」


「見た目は関係ない」


「胸ないし、筋肉ダルマだし」


「それがどうした、ダメな理由にはならない」


 レプトはクォークの瞳を見つめて、


「俺じゃダメか?」


「ダメってわけじゃ……」


「じゃあ、いいのか?」


「……」


 それを肯定と受け取ったレプトは、クォークの唇を奪った。


「んーー」


 はじめてのキスに戸惑ったクォークは、レプトを引き剥がして、


「苦しい。いきなりすぎ!」


 顔を赤面させながら抗議した。


「ごめん。嬉しくて、つい」


 はじめて見せた乙女の姿に興奮したレプトは、


「この先もいいか?」


 レプトは返事を待たず、クォークの服に手をかける。


 すっかりおとなしくなったクォークは、無抵抗で裸にされ、恥ずかしそうに身体をよじった。



 ………………。


 …………。


 ……。



 事が終わったあと。


(ヤバイ。体の相性が抜群だ!)


 こうして、幼なじみは恋人になった。




     ◆




 クォークたちは軽食屋を出ると、別れて帰宅した。


 距離を置いて尾行していたレプトは、視界の端に違和感を感じた。


(あいつ! 変装してるが、奴だ!)


 姿を消した他国の工作員が、クォークを尾行していた。


(仲間を集める時間はない……か)


 クォークは帰宅しないのか、自宅とは違う方向に移動していた。


 レプトは、さらに距離を取って工作員の動向を探ることにした。


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