第07話 刺客



 街外れの一軒家を借りて、クォークが喜びそうな内装を考える。


 貴族のように風呂に浸かることは無理でも、大きめのタライにお湯を張って汗を拭えれば、水浴びよりはいいだろう。


 奥の一室を改造して、湯沸かし用のカマドと排水溝を作った。


 クォークは寝相が悪いから、大きめのベットも用意した。


 かなりの出費になり、この半年で貯めた金はすっからかんになった。




     ◆




 盗賊ギルドとカジノに顔を出し、数日出かけることを伝えて村に帰省した。



 いろいろあってレプトも諦めた結果、クォークは村を出て一緒に街へ行くことになった。



 村を出発して3日。


 街に着いたレプトはクォークを借家に案内して、


「まだ片付けとか済んでないけど、ここが一緒に住む家だ」


「すっご! レプトの稼ぎすごいんだ?」


「そうでもない。半年の稼ぎが無くなった」


「なにそれ?」


「クォークは喜んでくれると思うけど――――」


 簡易湯浴み部屋へ案内されたクォークは、


「すっごー。なにこれ。すげぇ!」


 これにお金がかかったと説明したレプトに、


「めっちゃ嬉しい。私のため?」


 クォークは力いっぱいレプトを抱きしめた。


 それはレプトの意識を奪う行為だと、気づきもしないで……。




     ◆




 レプトは、取り止めなく思い出しては夢中で短剣を振っていた。


「レプト、ちょっといいか?」


 ギルドマスターに声を掛けられたレプトは短剣を仕舞って、


「どうした?」


「気になる情報が入った」


 タオルを取り出し汗を拭う。


「帝国の工作員が街に入り込んだらしい」


 レプトは、またかとため息をつく。


 他国の工作員が、勇者候補のクォークを狙って街に来ることがある。


「助かる。裏取りしてくる」


 レプトはギルドを出た。



 カジノの地下で、昨夜の敵に関して聞くと、


「こんなモンを持ってたぞ」


「シャルパン王国の密書だと?」


「ああ。どう思うよ?」


「これが本物ならド素人だが……」


「こんなあからさまな証拠を持ち歩くとは……」


「かえって混乱させられる」


「それが狙いだろうよ」


 レプトは、ふ~っとため息をついて、


「話しは変わるが、街にブルターニュ帝国の密偵が入ったらしいな?」


「相変わらず耳が早いな」


「それが仕事だ」


「商人を装っているようだ」


「特徴は?」


「赤いホロ馬車に、シャルパン王国の小売店のマークを入れてる」


「動きがあったら知らせてくれ」


「おぅよ」


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