第66話 レディ・カモミールの手記

『シルヴィアーナ様』


 彼女は屈託もない柔らかな笑顔で


 わたくしに笑いかけてくる。


『シルヴィアーナ様、シルヴィアーナ様、聞いてください』


 曇りひとつないない


 真っ直ぐな瞳をわたくしに向けて。


『シルヴィアーナ様……』


(ああ、そうよ)


 顔をあげると


 彼女は淡い光とともにと消えていく。


 その姿は微動することもない。


 ゆっくりとゆっくりと


 カモミールティーからあふれ


 空へと登っていく水蒸気とともに


 流れるように空気へと変わっていく。


(そうよ。そうだった……)


 彼女の名前は、


 ノエル・ヴィンヤード。


 いつも


 わたくしのたったひとりの理解者で


 そして味方だった。


(ああ、そうよ……)


 わたくしは欲しかったのだ。


 どんなときも側にいて支えてくれる


 たったひとりの強い味方を。

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