第38話 レディ・カモミールの手記

 彼女はお姫様だった


 たくさんのお花に囲まれて


 妖精たちに愛されて


 そんな彼女はいつも輝いて見えた。


 体が弱くてすぐに倒れてしまう僕は


 どこにいても厄介がられる存在だった


 そんな僕に


 唯一笑いかけてくれてくれたのは


 彼女だった。


 お城を抜け出して


 美味しいスコーンや


 お茶を持ってきてくれる。


 あいつには近づくな


 絶対そう言われていたであろうのに


 いつも元気を運んでくれた。


 早く良くなりますように


 そう共に祈ってくれる。


 きっとこの笑顔がそばにあれば


 僕は強くなれると信じていた。


『大好きだ』


 その笑顔も笑い声も。


『大好きだ』


 優しく僕の名を呼ぶ彼女も。


 ふわりと香るカモミールの甘い香りも。


『大好きだ』


 僕のお姫様。


『大好きだよ、愛しのシルヴィ』


 そう言うと


 いつも彼女は笑ってくれたんだ。

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