運だけで恐怖スポット

 大吉は心霊研究部の幽霊部員。


 そんな大吉に部長の恐子先輩から連絡が来る。


「今度の土曜日、廃病院を調査しに行きます! たまには顔出すように!」


 大吉はたまには部活に顔を出すかと思い、廃病院に行くことにした。


 そして土曜日……


「おい、大吉! なんでこんなにたくさん友人連れてきた!」


 大吉は恐子先輩が友人も連れてきてよいというので、友人の不動と鉄男の不良集団も誘って連れてきた。


「こんな大人数で……、団体旅行じゃねぇんだよ!」


 恐子は大吉に小言を言ったが、集まってしまったものは仕方がないので一緒に廃病院に連れていくことにした。


「いい、ここから先は気を付けて! この廃病院では車いすを押したナースの幽霊が良く目撃されているの! 絶対に一人では行動しないこと! あと異変に気づいたらすぐに私に連絡すること! いいわね!」


「うす!」


(なにあの集団は! また肝試しか! 見せしめに一人くらい殺してあげようかしら!)


 廃病院の2階からナースの幽霊が大吉たちを眺めていた。


「じゃあ、みんな入るわよ!」


 恐子先輩たち心霊研究部のメンバーと鉄男の不良集団、そして大吉と不動という3つのグループに分かれて病院に入って行った。


(あの『big melons』(おおきいおっ〇いというスラング)とかいうふざけたTシャツを着ている奴を殺すことに決めた!)


 幽霊は大吉をターゲットにすることにした。


「おい、不動、ここ手術室じゃね?」


 幽霊に狙われているとも知らずに大吉は不動と手術室を調べる。


(なんて不幸な若者、取り殺してあげるわ……)


 幽霊が手術室に入ろうとしたその時、大吉の隣にいる不動を見て、幽霊は動けなくなった。


(なにあれ……。あれって、ご祈祷の時に祀られてるアレじゃないの……。え、仏様? なんで? 成仏させに来たの?)


 幽霊は慌てて大吉をターゲットにするのはやめて、鉄男たちの方に向かった。


 しかし……。


 恐子先輩に気合を入れろといわれたことを間違って解釈した鉄男たちは睨みを効かせながら病院の階段を登ってくる。


(あいつらもなんなの? なんでメンチ切ってるのよ……。それにあの人数。この病院の幽霊たちと抗争でも起こすつもり……)


 それから2時間、ナースの幽霊は大吉たちや鉄男たちに見つからないように逆に病院内を隠れまわった。


 2時間後……。


「今日の調査は終わりにするわ! ちょっとあんた達に言いたいことあるから、全員正座! 早くしろ!」


 大吉や鉄男たちは恐子先輩に言われて、廃病院の前で正座させられる。


「おい、まず不良ども! 『リ〇ンジャーズ』とか『ク〇ーズ』のノリで来るんじゃねぇよ! 抗争しに来たわけじゃねぇんだからよ!」


「は、はい……」


 鉄男たちは恐子先輩に気迫に押されて素直に謝る。


「あと不動! お前は幽霊が一番出会ってはいけない面してるんだからマスクぐらいしてこい! これでスキンヘッドでもいたら強制成仏させに来たと思われんだろ!」


「す、すまん……」


 不動も恐子先輩には弱く素直に反省した。


「まあ、いいわ。最後に記念撮影してかえりましょ!」


 こうして廃病院の前で記念撮影を行った。


 以降、心霊研究部には心霊写真ではなく、不良の集会のような写真が飾られるようになった。

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