第80話 側近の話
ガンマの話はここで区切り、今度はその側近の話となった。マーク・アモウ伯爵令息のことだ。
「ガンマ殿下の唯一の側近となったマーク・アモウ伯爵令息なのですが、どうやら独自でお嬢様の情報を探り始めているようです」
「マーク・アモウが私を? どうしてまたそんな……?」
ミロアは不思議に思った。マーク・アモウは宰相の息子であり、側近たちの中でも頭脳労働はというタイプの男だった気がする。そんな男がミロアの情報を求める理由は間違いなく……ガンマのためではないはずだ。
「あの男が私の情報を求める理由は何かしら? 流石にガンマ殿下のためとは思えないわ。側近と言っても、どうせガンマ殿下のことなんて見限っているでしょうに」
ガンマは王太子ではなくなり、立場も相当悪い状態だ。学園でも社交でも王家の中でも、男爵令嬢にうつつを抜かして婚約者に見放された愚かな王子として嘲られ見放されている。それは側近のマーク・アモウも同じはずなのだ。彼個人の状況も心境もガンマほどでなくても相当悪いはず。
「流石はお嬢様ですね……マーク・アモウの目的はある程度把握できていますが、その前にあまり良く知られていないマーク・アモウの家のことをお嬢様にお伝えしなければなりません」
「え? 何よそれ?」
ミロアが首を傾げるが、それに対してエイルは少し間をおいた。それが意味することはかなり重要な話であるとミロアはすぐに悟った。
(こういうのって結構重要な話になる雰囲気なのよね。前世の漫画や小説でしか知らなかった雰囲気を体感させられるなんて、まさに異世界転生ならではよね……おっと、今はシリアスな展開だった)
シリアスな展開……前世の書物等を思い出しかけたが、すぐにそんな場合じゃないとしてエイルの話に耳を集中させるミロア。
「お嬢様は我が国で戦争を起こして敗けたという歴史はよくご存知ですよね?」
「ええ。歴史の教科書にも載っていることでしょ。知らないわけないじゃない」
「その戦争が起きる前後で王家で面倒ないざこざがあったことはご存知ですか?」
「王家のいざこざ? もしかして教科書にも乗せられない内容を聞かされるの?」
「そういうことです。ここからは王家の闇……歴史の闇に葬られた内容に入り込むことになります。お嬢様はそれを耳にする覚悟はありますか?」
「……大丈夫、続けて」
「……!」
王家の闇、歴史の闇。普通の貴族の子供ならば、そんな言葉を耳にするだけで戸惑ったり動揺するものだがミロアは落ち着いていた。
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