第65話 義母の思い
そして、それは見事に成功した。ミロアの方の行動は、ある意味勢いに任せてのものだったのだが、少なくとも『妹に好かれたい』というミロアの願望は叶った。
「スマーシュ、これからは私と義母様とお父様の四人で屋敷に暮らしましょうね!」
「うん! ワタシも一緒に暮らしたい!」
ミロアはスマーシュのそばまで駆け寄ると、そのままスマーシュに抱きついたり、抱っこしてくるくると回ったり、頬ずりし始めた。前世で『妹』がいなかった事もあってか、スマーシュのような半分だけでも血の繋がった妹の存在に新鮮な気持ちもあるのだ。
(天使そのものだわ! ああ、妹っていうのはこういうものなのね!)
第三者から見ればちょっと引くほどの溺愛ぶりをみせるミロアの姿に、すっかり置いてけぼりにされたバーグとイマジーナは目を見開いて唖然とするばかりだった。
「……み、ミロアにこんな一面があったとは……」
「あ、あれがミロア様なのですか? 変わられたと聞いていましたが、あんなにスマーシュをかわいがってくれるなんて……」
バーグは精神的に成長したミロアが義母と義妹を受け入れることに期待していたし、バーグから事情を聞いていたイマジーナも同様の思いだった。しかし、これほどまでにミロアが義妹のスマーシュを溺愛し始めるなどとは二人の予想を超える結果になった。勿論、とても嬉しい意味でだ。
「……ふふふ、ミロア様があんな風に接してくださるとは流石に思っていませんでいたわ」
「イマジーナ?」
「あの頃のミロア様は、母君のことを忘れられるはずがなくて私を拒絶されました。それは幼女としては当然の反応だから私も彼女の意思を理解し尊重しました。ですが、いつかはミロア様のお心を支えてあげたいと思ってもおりましたゆえに、いつかは一緒に暮らしたいと願っていました。しかし、その『いつか』はもう少し早くても良かったのかもしれませんね」
イマジーナの視線の先には、ミロアとスマーシュが姉妹らしく振る舞っているのだ。スマーシュとは赤ん坊のときにしか会っていないのに、二人はもとから仲のいい姉妹のように楽しそうに会話したり遊び始めていた。
「……そうだね。どうやら私が不甲斐ないばかりにお前たちに……いや、無粋な話は今はいいだろう。私達も二人の親として、家族として、楽しい会話をしようじゃないか」
「ふふふ、そうですね。これから新しい日常を始めていきましょうね」
バーグとイマジーナも、娘たちの会話に交ぜてもらうために二人に歩み寄る。
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