第42話 白状

オルフェは白状した。それは、オルフェが休学中のミロアの元を訪問したのはガンマの側近の一人の頼みでミロアの様子を見て聞いて報告するためだったことだ。ただ、ミロアのことを本気で心配していたことも事実であって、決してミロアの不利になるような情報は報告するつもりはなかったことも告げた。



「――そういうわけで、俺は自分の家のためと個人的にもミロアのことが気になっていたために今日ミロアに会おうとしていたんだ……」


「…………」


「これはもう信用ならないかもしれないのは分かるけど、俺は決してミロアの不利になるようなことはするつもりはない。まさか、突き飛ばされたり軽んじられていたことまでは知らなかったんだ。ガンマ殿下の学園での行いくらいは知っていたのに……」


「…………」


「ミロア、君がそんな俺のことをどう思うかは君の判断に委ねるよ。ミロアを心配してたのは事実だけど、誰が見ても俺が自分のために行動しただけにしか見えないのも事実だから……」



まるで断罪される被疑者のような心境で語るオルフェ。そんな彼の話を聞いたミロアは一つだけ確認を取った。



「オルフェ……貴方はこんな事実をどうして私に告げるの? 何も言わなければ貴方は私にもその側近の男にも信用されていたのに。わざわざ出世の近道を潰したことくらい分かるでしょう?」


「分かっているよ。でも俺は、幼馴染のミロアに対して間者のような真似をすることは、不誠実で貴族として恥ずかしいと思えてならなかったんだ。そんな負い目に耐えられなくて、そんな自分が苦しくて……逃げたかっただけなんだ。ああ、駄目だ……結局、俺が情けないだけなんだ。こんな駄目な幼馴染で……御免」


「オルフェ……」



ミロアを騙しているような、利用しているような立場になってしまったことで、それが恥ずかしくてミロアに全てを告げることにした。要約すればこんな感じだなとミロアは思った。



だからこそ……ミロアはオルフェが『敵でも味方でもある』と判断した。



(やはり、オルフェは敵側にいたんだわ。でも、私に対して罪悪感を感じて苦しんで、それを私に話してしまうことで救われたかったのね。……名ばかりの侯爵のことは私も聞いたことはあるけど、そのプレッシャーはそこまでオルフェを追い詰めていたんだ。本来のオルフェは曲がったことが嫌いでそれなりに正義感がある人なのかもしれない。そういう意味では、オルフェは味方側にもなってくれる。それはつまり……)



敵でも味方でもある……それの指す意味の一つとして、ミロアは前世の知識の中でこう呼んだ。



(二重スパイ! それが今のオルフェの立場ね)

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