第9 2月 14日

もうそろそろ出ようということになって、二人とも出口に向かって歩いていると、遠目からも出口付近にひとだかりが出来ていた。近づくにつれ人々の視線が外に向かっているのがわかる。人々の後ろの隙間から覗くとその光景に「うっそー」「うそだろう?」と思わず声が出ていた。

透明な自動ドアのガラス越しにはこれでもかというぐらいの、雪が吹雪いていた。「いつの間にこんなに積もったの?」10センチ位の雪の層が、屋根や車の上にできていた。「あったかい部屋にいたら、気づかないわなあ」と、林二はため息をつく。周りの人も唖然としていて雪景色に見とれるものや、携帯で連絡をとっていたり様々な様子であるが、誰一人として外にでる勇敢なものはいない。

しばらく景色に見とれていたが「どうする?林二」「もう、これは行くっきゃないわなあ、歩いて5分もかからないところなんだし…」意を決してお互いもってきた手袋をはめ、マフラーは頭から巻いてちょうど目の部分だけを出し戦闘態勢にはいった。


そして人だかりの視線を一斉に集めながらドアに向かって進む。中ドアがスッーと開く。外に出るには、あと1枚のドアがある。躊躇せずにもう1枚のドアの前に進む。このドアも、スッーと開く。外気が一気になだれ込む。

「うっー、寒っ」

「寒ーい」二人に容赦なく吹雪いてくる。あっという間に、服や頭に薄っすらと雪が積もっていき、体内温度がいっきに下がる。お互い寄り添いながら吹雪いている方向にあらがって進む。林二が、何か話しかけるが聞こえない。やっと聞き取れた言葉が「公然にくっついていられるなんて、神様感謝」なんて、言葉では余裕がありそうだが寒そうに背中を丸めていて見た目に余裕の欠片も感じない。こちらも返事を返す余裕もない。

(早く、暖かい家に帰りたい)

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