127 幼馴染みもいいヤツである


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。シメのダンスはいらなくない?


 私の諦めない発言で喜ぶ野球部、サッカー部、バスケ部と、どうして喜んでいるかわからない生徒たちが入り乱れていたら、またララちゃんネルのテーマ曲が流れて来たので、私が踊ってシメ。

 感謝の言葉を残したら、ダッシュで校舎に逃げ込んでしばらく身を隠す。するとスマホが鳴ったので、慌てて出たらエマだった。

 何やら話があると言うので、私は3年2組に指示通り隠れながら現れた。


「「ララちゃ~ん!」」


 そこでは幼馴染ミーズが待ち構えており、結菜ゆいなちゃんと愛莉あいりちゃんは私の顔を見るなり抱きついて来た。


「お兄ちゃんが心配かけてゴメンね」

「ジュマル君よりララちゃんだよ。あんなに頑張ってたのに大丈夫?」

「最後の最後でこんなことになって……私だったら耐えられないよ~」


 意外や意外。2人はジュマルにベタ惚れなのに、私のことを心配してくれている。


「うん。大丈夫。心配してくれてありがとうね」


 私も嬉しくなって2人をギュッと抱き締めて励まし合っていたら、エマが話に入る。


「思ったより元気そうでよかったよ。ララに何かあったら、ジュマルをぶん殴ってたところだ。当たるかは別として」

「うん。ありがとう。私もエマが冷静でよかった。いつ殴り込んで来るかと思ってたよ~」

「行こうと思ったけど、私も同罪っつうか……ララがジュマルが変だと言ってた時、茶化して間違ったアドバイスしたし……」

「まさかこんなこと考えてたなんて、私でもわからなかったんだからエマのせいじゃないよ」


 エマも珍しく落ち込んでいたから励まし合っていたら、大翔ひろと君が私の前で頭を下げた。


「申し訳ありませんでした!」

「え? どうしたの??」

「ジュマルさんが受験するなんて言い出したの、自分のせいなんです。自分が野球辞めて受験するって言ったから……」

「ないない。それはない。お兄ちゃんが勝手にやってることだから、大翔君が責任感じることないよ」

「でも……」

「そんなことより、大翔君はプロに行かないの??」

「実力不足ッス!」


 大翔君はキャッチャーとして頑張って来たが、いまだにジュマルの本気の球は捕れないし、ミットを構えたところに正確に来ているからギリギリ捕れている程度らしい。

 バッティングも甲子園ではあまりいい結果を残せなかったから、プロ入りしてもたいした活躍ができないと、ここ1年ぐらいは限界を感じてプレーしていたそうだ。


「せめて山田先輩ぐらい才能があれば……」

「山田先輩って、お兄ちゃんが1年の時にドラフトが来た人だっけ? 活躍してるの??」

「2軍でくすぶっていると聞いてます……」


 ジュマルの球を初見で受けた人が全然芽が出ていないのでは、そりゃ大翔君も自信を無くすよね。


「そっか……今までお兄ちゃんに付き合ってくれてありがとう。大翔君の新しい夢、私は全力で応援するからね。もちろんお兄ちゃんだって今まで通り、大翔君のことを一番の仲間だと思ってるからね」

「はいッス……ううぅぅ」


 涙する大翔君を私たちで励ましていたら、何故か関西弁が聞こえて来た。


「一番はわてでっしゃろ!?」


 がく君だ。私は気付いていたけど触れなかったのに、入って来やがった。


「うるさいな~。何しに来たのよ~」

「ひどっ!? わてだってアニキと姉さんが心配だったから駆け付けたんでっせ~~~」

「はいはい。ありがとね」

「軽っ!?」


 今までのやり取りなら、こんな扱いになるに決まってるだろ。見てなかったのか??


「そんなこと言ってていいんでっか? 耳寄りな情報ありますんやで~??」


 岳君はパンフレットを揺らして悪い顔をしてるけど、どうせたいしたことじゃないだろう。しかし聞いてあげないといつまでもペラペラ喋りそうなので質問してやるよ。


「耳寄りって??」

「わて、この大学に行こうと思ってまんねん。偏差値は低いから、わてでも入れそうなんで、アニキもどうでっしゃろ??」

「あんたがお兄ちゃんと一緒の大学行きたいだけじゃないの?」

「そうですけど、ここは家から近いし、野球部、サッカー部、バスケ部が揃ってます。実力は中の下ですけど、アニキが加入すれば、いつでも日本一になれますでしょ??」

「つまり、お兄ちゃんがやりたくなったらいつでも戻れると……」

「奥さ~ん、お得でっしゃろ~??」


 言い方は腹が立つけど、パンフレットを見たらなかなかジュマルに合っていそうな大学だ。


「でかした! 褒めてつかわす!!」

「へへ~」


 なので褒めてあげたら、エマたちから冷めた目で見られた。岳君が年貢を減らしてもらった農民みたいになってるもん。私の褒め方がお代官様みたいってのは関係ないはず……


「でも、岳君って、お笑い学校に行くんじゃなかったの?」

「それがオカンに大学行かないと芸人は許さんと言われましてな。いまさら教科書ひっくり返して勉強中なんですわ~」

「まぁ厳しい世界だもんね。お母さんの気持ちもわかるよ」


 岳君の夢の道筋も聞いてあげ、皆でこれからも頑張って行こうと話をしていたら、あっという間に時間は過ぎて行くのであった……


「うおっ!? なんじゃこのデカイの!?」

「私の護衛なんだけど……」

「ないわ~。金持ち、ないわ~」


 エマとはぜんぜん話ができなかったので車で送ってあげようとしたら、デカイ外国人2人にビビるのであったとさ。

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