112 学校の変化である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。イジメ、アカン!


 皆に仲間外れにされた私が闇墜ちしそうだったので、エマがなんとかすると言った翌日。昼休みにエマが私を引っ張って体育館裏に連れて来た。

 「なんで体育館裏?」と思っていたけど、そこには幼馴染ミーズが揃っていたので謎は解けた。


「ここで私をボコボコにしてお金を盗るんだ……あげられる現金なんて持ち歩いてないよ~」


 私が泣きそうな顔で訴えると……


「ララちゃん、違うよ? どうしてそんなこと言うの??」

「私たちがそんなことするわけないじゃない。ね?」

「あはは。最近のララ、めっちゃネガティブなんスよ。気にしないでやってください」


 結菜ゆいなちゃんと愛莉あいりちゃんは慌てて宥め、エマが私を支えてくれた。


「んっとね。本当はジュマル君に、ララちゃんには秘密にするように言われてるんだけどね」

「こんなになってるんじゃ仕方ないね。ジュマル君には、私たちが言ったって絶対に言わないでね?」


 何度も守秘義務を強要されて聞いた話の内容は、私をイジメる話ではなく、私の負担に関する話だった。


 どうもジュマルは、エマの話をない頭を使って考えたけど答えが出なかったから、幼馴染ミーズを頼ったらしい。それで私が裏で何をしていたかを聞いたら、誰も知らず。

 なので幼馴染ミーズが各部活の上層部を集めて私のやっていたことを摺り合わせたら「1人で働きすぎじゃね?」との結論というか「これ、自分たちのやることじゃね??」と、めちゃくちゃ反省したらしい。


 それだけ情報が集まればバカなジュマルでもエマが言っていた意味がわかったらしく、私の負担を減らしてくれと頭を下げたそうだ。

 皆も反省していたので逆に謝罪して、「ララちゃんにはゆっくりと試合だけ楽しんでもらおう! お~!!」と、一致団結したらしい……



「うぅぅ……みんなゴメ~~~ン! うわ~~~ん」


 そんな話を聞かされた私は号泣。「みんな」とか言いつつこの涙は、私のためにジュマルが頭を下げたことがほとんど。

 あの、常識がないジュマルの成長が嬉しすぎて、涙腺が破裂してしまったのだ。


「こいつ、先輩たちにイジメられてたと思ってたんスよ」

「なんでララちゃんをイジメるのよ~」

「んで、校長に直訴して権力で止めようとしてたんスよ」

「ララちゃん、そんなことしようとしてたの!?」


 私が泣いていては話にならないとエマが通訳みたいなことをしてくれたけど、いらんこと言って愛莉ちゃんを驚かせるな。結菜ちゃんが思い出しちゃっただろ。


「ララちゃんならありえるかも……小学生の時も、イジメを先導してた先生をあの手この手で辞めさせたし……」

「「マジで??」」

「私じゃなくて、ママだよ~。え~~~ん」


 エマと愛莉ちゃんが信じそうだったから泣きながらも訂正してみたけど、結菜ちゃんは私の黒歴史を語って怖がらせるのであったとさ。



 その夜は、私はニコニコとジュマルを見ていたけど、気持ち悪がられたので八つ当たり。私のために頭を下げたことを聞いたなんて言えないんだもん。

 守秘義務が得意な母親にだけは教えてあげたら、私以上に号泣。次の日は私と一緒にニマニマとジュマルを見ていたので、ダブルで気持ち悪がられた。父親は仲間に入れてもらえなくて寂しそうにしてた。


 そんな日々だが、部活は予選を順調に勝ち進んでいる。今回の冬の大会は三者競技の結果、野球とサッカーの国体をやっているらしい。

 バスケは辞退したんだって。去年は優勝したし、今年の夏はあんなことになったもんね。他校に気を遣ったと思われる。


 その試合には、私の応援は許されていたので家族で見に行ったら、ジュマルは出場していなかった。

 聞いた話だと、ジュマル抜きで確実に勝てる試合はチームメートだけで戦い、怪しい試合は様子を見たり、必要な試合では出すようにしているらしい。


 これも、私が関わらなくなった変化。3競技で話し合うことで、ジュマルの投入の仕方も意見が飛び交いこうなったとのこと。

 私の前では外す選択肢がなかったみたい。親族が見てるもんね。てか、そんなことできるなら、私も反対しなかったよ~。スポーツ、そこまで詳しくないの。


 そんな感じで日々が過ぎていたけど、今日も私は机に突っ伏してる。


「またか……今度はどした?」

「ひ、ひま……」

「ああ~……」


 エマが慰めようとしてくれたけど、私の頭を撫でようとした手は引っ込んだ。だって、この時期はいつも忙しかったんだもん!


「暇なら、将来にやりたいこと考えたらどうだ? 結局、何も決まってないんだろ??」

「う~ん……やりたいことは多いのよ。なんでもなれるように幼い頃から勉強とかも頑張って来たし」

「ララってひょっとして……」

「なに??」

「欲張りすぎて、決められなくなってるんじゃね?」

「え……」


 エマの指摘が的確すぎて私が固まっていると、指折り数えてくれる。


「弁護士は難しいと思うけど、ララの成績ならいけそうな気がするだろ。社長や秘書なんて資格もいらないんだから、みっつの部活を1人で取り仕切っていたから余裕だ。スポーツエージェントもだな。

 それぐらい賢かったら、会社も引く手数多だろうな。なんといっても美人だし。英語もできるしな。このまま理系の大学に進めば、さらに進路は増えるぞ? 医療だって科学だって無数に職業はあるんだからな」


 ちょっと聞いただけでも、私は二度目の人生で最大のやらかしをしていると気付かされて、顔は真っ青だ。


「お、お嫁さんになる……」

「そんだけ才能あるのに現実逃避するなよ~~~」


 そりゃ、これだけ選択肢があったら、私の頭はパンク。今までの努力も裏目に出ているので、私は一番経験の長い専業主婦に戻りたくなるのであったとさ。

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