095 中1の総決算である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。パルクールは、もうやらない……
ジュマル目線のパルクールを見たせいで、私はトラウマ。視聴者は無責任に「もっとやって」とか「いい場所ありますよ」とか言っていたけど、私が見ないでいいならやるよ?
適当な配信で折衷案を出したら、「妹ちゃんも見て~!」の嵐。やっぱり、私の不幸が見たかったんだな……無視してやる!
これでは私がワガママ言っているみたいなので、パルクールを見た人の感想とかを配信。だいたいの人は「人間技じゃない」だとか。ジュマル目線は「怖すぎてチビッた」だって。だったら私に見ろって言わないでよ~。
そんな感じでジュマルの温いスポーツ動画を配信して、私が視聴者の感想で配信回数を増やしていたら、ネガティブなコメントがチラホラ出て来た。
「えっと……CGとかトリック映像とか言われるのは構いませんが、誹謗中傷とか殺害予告はやめてください。うちの母親は弁護士をやっていて、父親はインターネット関係に強いので、何人か検挙されてしまいました……自分の身を守るために、すぐ消して~~~!!」
でも、あっという間に物理的に鎮圧。だって、ブチギレた両親が犯人を
私の必死の訴えというか母親が弁護士と言ったからか、誹謗中傷が一気に減ったから、身に覚えがある視聴者がコメントは消したのだろう。もしくは捕まったか……
それでも私を信じない人もいて、誹謗中傷のコメントをしつこくしていた人もすぐに消えたから、次回の配信では登録者数がめっちゃ減った……
「怖くないですよ~? 感想書いてもこの世から消されませんよ~? 楽しい放送しますんで、コメントください! お願いしますぅぅ~~~」
それと同時にコメントする人もいなくなったので、寂しい配信がしばらく続くのであったとさ。
ただし、両親が警察に突き出した人たちは大量のアドレスを使って他所でも同じことをしていたらしく、誹謗中傷をする人が激減して、殺伐としたネットの世界がしばらく優しくなったそうな……
動画配信はコメントが緩やかに戻りつつあるが、日常はOM1ウイルスのせいで冬になっても戻る気配がない。
学校もリモート授業や分散登校など様々な学習方法を用いて授業をやっているけど、政府が何もしないから解決しないと思う。国民にお願いばっかり。いい加減にしろよ。
冬休みに入った頃に、世界ではワクチンができたような話が出て来たけど、日本に届くのはいつになるかわからないので生活も変わらない。お正月も過ぎちゃったよ。
今年こそはなんとかしてくれないと、ジュマルはもうすぐ3年生。活躍の場がなくなって、スポーツ推薦を受けられない!
私は焦りを覚えながらも予選の応援に行ったり、スカウトのダイレクトメッセージを確認する毎日。
いちおうスカウトはあったよ? 聞いたことのないカタカナの高校とか社会人チームとかパルクールとか。忍者の里とか反社とか……最後のふたつはなんでDMしたんだろ?
できることなら家から行けるところに入学させたいので全て断った。だってジュマルに寮暮らしは無理っぽいもん。反社は警察に相談しました。
今年のジュマルも、やっぱり凄い。サッカーとバスケの予選を1人で勝ち進んでいる。学校も予選だというのに大盛り上がりだ。
バスケはジュニア大会を2連覇したのでスカウトはいっぱい来たけど、プロはまだ早いし日本チームの年棒はめっちゃ安い。全て保留にしておいた。あと、中1の私が代理人やってるのに驚かれた。
サッカーも目聡いプロチームからお声が掛かるようになったけど、ジュニアユースの誘いばかりなので行かせられない。給料が出ないどころか月謝を取られるんだよ? そんなもんらしいけど。
ここはやはり野球しかない。とか思っていたら、私の中学校生活の1年目が終わった。
「なんのために、お兄ちゃんと同じ中学校に入ったの~~~!!」
なので庭で叫んでみたら……
「ララちゃん。去年と同じこと言ってるよ?」
それを母親に見られてしまった。恥ずかしい! てか、なんで知ってるんだ……監視カメラか!?
「だって~。何もしないまま1年終わっちゃったんだよ~?」
「何もしてないことないでしょ? 動画配信とか頑張ってたじゃない」
「それは学校と関係ないよ~」
「まぁそうだけど、こんなに稼げるなら、プロにこだわらなくてもよくない?」
「稼げるって??」
「あ、そっか。私が口座の管理してたから知るわけないか。ちょっと待っててね」
パタパタと走って行った母親は、戻って来ると私にスマホの画面を向けた。
「ん~? 何桁これ??」
数字が何個も並んでいては、私もパッと見ではよくわからない。老眼ではないからね?
「9桁だね」
「9桁ってことは、0が8個だから……お、億??」
「イエ~ス」
「リアリー??」
「オフコ~ス」
「オーマイガッ!?」
まさか中学生でありながら億万長者になっていたのだから、私もアメリカ人みたいな驚き方になっちゃった。いや、母親が「イエ~ス」とか言うから英語脳になったのだ。
「えっと……税金とかはどうしたらいいのでしょうか?」
「ララちゃん。もうちょっと子供らしい喜び方できない? いきなり税金の話なんて、夢の欠片もないわ~」
「そんな大金、怖いんだも~~~ん! ママ、ごめ~~~ん!!」
「なに謝ってるのかな~??」
前世でも見たことのない大金を稼いでいたなんて、税金も高くなるのは見え見えなので、めっちゃ怖い。私は両親の税金が高くなるのではと、母親に抱きついて謝るのであったとさ。
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