頑張れ!スライム王子

あかべこ

第1話

「スキルはスライム化、です……」

大司祭からそう告げられた時僕は目の前が真っ暗になって、僕の脳裏にあったのは<廃嫡>の二文字だった。

後ろにいた並み居る大貴族や王家の人間、そして僕の父である国王陛下は何とも冷たい目で僕を見つめている。


絶対アレだ!帰ったら『お前を追放する!』って父から宣言されて無毛の荒野とか無人島とかに放り込まれるんだ!そんで最後はヤバいやつに食われて死ぬんだーーーーーーー!!!!!!!

真っ青になりながら祭壇を降りてトボトボと自分の部屋へと戻る。

部屋に戻って追放の準備を済ませるために。


***


半泣きになりながら荷物をカバンに詰めていく。

持ち込めるだけの衣類に刀剣、教科書と勉強道具、自力で薬を作るための調薬動画に毛布に……あと何詰めておかば死なないかな?

そんなことを考えていると「入るよ」という声がする。

「母上……」

部屋の入り口に立っていたのは王国の第三王妃である僕の母であった。

ただの農民の娘であったが剣術の最下位スキルである剣士を持ち、努力して王宮の女性騎士となり女性で初めてドラゴンの喉に刃を突き刺した功績から男爵位を得て第三王妃にまでのし上がった恐るべき人である。

「何で荷物を詰めてるんだ?」

「だって、あんなスライム化なんてスキル聞いたことありません……絶対父上に廃嫡されて追い出される……」

僕の父である国王殿下には3人の妻がいて、第一王妃との間には腹違いの弟がいる。

父がその腹違いの弟を王にしたがってることは気づいていたし、古今東西ハズレスキルを持った者が家を追放されることはよくある。

「廃嫡はされないよ」

「そんなはずありません……」

半ベソの僕に母はハンカチを差し出してくれる。

「一年の猶予を貰った」

「1年後に廃嫡されるって事じゃないですか!」

「違う!……ったく、お前って子は。そもそも、お前スライム化なんてスキル知ってたか?」

「いえ……」

「あの場にいた全員にスキルについて聞いたが、大司祭すら知らないと答えたスキルだ。スライム化がアタリかハズレか誰も分からないのに追い出すのは早計過ぎる」

この国で最も偉い司祭である大司祭様すら知らないスキル、というのは確かに引っかかる。

「第二王子のスキル判別まだまだ一年ある、その一年でスライム化のスキルを解き明かせばお前は廃嫡にならない」

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