第51話 双子の決心



 妹の家を出て駅前のホテルに泊まり、次の日は魔力研究所へ行った。


 バイトしたり特区内を散策したりと、異世界文化を体験したりして過ごした。



 あれから4日。


 葵から連絡が入り、家へ帰る許可が出た。



「ただいまー」


「「おかえり」」


「おかえりなさいませ、おサルの蒼大そうた


 棘がある物言いだが、我慢するしかない。


 一花いちかには、それだけのことをしてしまったんだから……。



 蒼介そうすけさんが帰宅して、お馴染みの夕食後に話しがはじまる。


蒼大そうたさんがくれた、あのポーションって高級品だよね?」


「蒼大さん? お前、俺のこと呼び捨てにしてたじゃん?」


「いやぁ。歳が近いように見えても、中身は大人だなーと思ってさ。

 これからは、さん付けで呼ぶことにしたんだ」


「まぁ、いいがな……。

 あのポーションは、ランク10で買ったやつだから、高級ポーションだな」


「ってことは。1本5万円?」


「2本で10万って。ムダ使いにもホドがある! 兄さんはもう……」


 最近は、妹がプリプリ怒る姿をよく見る。


 ぜんぶ俺が原因なんだが……。


「そうは言っても、二人に何かあったら困るからな。念のためだ。ムダじゃないぞ」


 変な後遺症とか残ったら、それこそ詫びのしようがない。


 その安心が10万で買えるなら安いもんだろう?


 一花は会話に入って来ないどころか、俺と目を合わせてくれない。


 このまま一生嫌われ続けるのか?



「話しは変わるが。お前たちの進路は決まったのか?」


「予定通り、来年卒業したらシーカーになるよ」


 それを聞いた一花は、ウンと頷いた。


「そうか。このままだと、二人ともヤバイってことは理解してるんだよな?」


「うん。ちゃんとみんなで話し合ったよ」


「わかった。なら、もう何も言うまい」


 こいつらがあれで折れるようなら、それはそれで良かったんだが……。


 下手にやる気を出しても、空回りになる可能性が高い。


 一花がドンと音を立てテーブルに両手を置いた。


「あのさ~。アタシはさー」


 一花は大きく息を吸い込んで、


「あれくらいで負けないんだからね!

 蒼大。覚悟しなさい。

 ランク10なんて、すぐに追いついてやるんだから!」


「ほー。一花は懲りてないようだな。また剥かれたいのか?」


「ばーか。おとなしく剥かれてやるもんか!」


 てっきり、一花は口もきいてくれないのかと心配したが、空元気だとしても、ひとまず良かった。


「いやぁ。あの日の夜は大泣きしたわ」


「マジか」


「マジマジ。あんなに泣いたのはじめてだわ。アタシのはじめてを返せ!」


「それは出来ない相談だ。諦めろ」


 家族でちゃんと話し合ったんだろう。


 蒼介さんは目を閉じて聞いているだけだ。


「わかった。

 そう決めたのなら俺は応援する。

 もし、お前らにやる気があるなら、卒業までの三ヶ月、訓練に付き合ってやるが、どうする?」


「マジかぁ。やるやる!」


「ランク10の蒼大さんの特訓か。嬉しいよ」


「わかった。じゃあ、さっそく明日からはじめるぞ」


「「おー」」


「明日から朝は5時起きでランニングだ。

 学校が終わったらすぐに帰って来い。

 トレーニングメニューを作ってやる」


「えーーっ。5時に起きるの? それはヤだなぁ」


「サボりたければ寝ていればいいさ。強制はしないが、あとで痛い目をみるのは自分だぞ」


「はーい。了解でーす。がんばろーっと」



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